ヒダシュ・フリジェシュ

ハンガリーの作曲家、ヒダシュ・フリジェシュ（Hidas Frigyes）は、1928年 5月25日にブダペストで生を受け、2007年 3月7日にこの世を去りました。20世紀後半から21世紀初頭にかけて、幅広いジャンルで作曲活動を展開した人物です。

経歴

彼は故郷ブダペストにあるフランツ・リスト音楽院で、著名な作曲家ヴィシュキ・ヤーノシュに師事し、作曲の技術を深く学びました。音楽院卒業後、ヒダシュはハンガリーの音楽界において要職を歴任します。特に、1951年から1966年までの15年間、ハンガリー国立劇場の音楽監督を務め、劇場の音楽的水準向上に貢献しました。その後、1974年から1979年にかけては、市立オペレッタ劇場の音楽監督としてもその手腕を発揮しました。これらの劇音楽の現場での経験は、彼の後の作曲活動に大きな影響を与えたと考えられます。

劇場の職を離れた後は、特定の組織に縛られないフリーランスの作曲家として活動の主軸を移しました。この時期から、彼の創作活動はさらに多様化し、国際的な注目を集めるようになります。

作品世界と評価

ヒダシュ・フリジェシュの創作は非常に多岐にわたります。彼はオペラ、バレエ、協奏曲、交響曲を含む管弦楽曲、室内楽曲、声楽曲、合唱曲など、あらゆる主要なジャンルに挑戦しました。中でも、彼の名声を決定づけたのは、現代の管楽器のための作品群、とりわけ吹奏楽（シンフォニック・バンド）のための作品です。これらの分野において、彼は国際的に最も高く評価される作曲家の一人として知られるようになりました。

彼の音楽は、その編成やジャンルの広さだけでなく、多様なスタイルを取り入れていることも特徴です。劇場音楽で培われた劇的な表現力、管楽器への深い理解に基づいた巧みな書法、そして現代的な響きへの探求心が見られます。多くの作品が、その演奏効果の高さから、世界中の演奏団体によって取り上げられています。

委嘱と栄誉

作曲家としての名声が高まるにつれて、ヒダシュには国内外の様々な団体から多くの委嘱が寄せられるようになりました。オペラ劇場や放送局、大学、バレエ団、そして数多くの音楽協会などが彼の作品を依頼しています。これらの委嘱作品は、彼のレパートリーの重要な部分を占めています。

その音楽的功績は広く認められ、生涯にわたり数多くの賞やその他の栄誉が授与されています。これらの栄誉は、彼がハンガリー音楽界、そして世界の音楽界に与えた影響の大きさを物語っています。

代表的な作品

ヒダシュの膨大な作品リストの中から、いくつかの代表例を挙げます。

オペラ: 『Az asszony és az igazság（女性と真実）』、『Bösendorfer（ベーゼンドルファー）』、『Dunakanyar（ドナウ川湾曲部）』など。
バレエ: 『A cédrus（杉）』は、ハンガリーの画家チョーントヴァーリの作品に触発されたものです。
オラトリオ・合唱: 『Cancate de minorites』、『Te deum』、『Intelmek（忠告）』、そして吹奏楽伴奏による『Requiem』など。
協奏曲: 数多くの協奏曲があり、特に管楽器のための作品が目立ちます。チューバ、オーボエ、ファゴット、サクソフォン四重奏、ユーフォニアム、トランペット、トロンボーン、ホルンなど、多種多様な管楽器のための作品があります。また、ヴァイオリンやチェロ、ピアノ（吹奏楽伴奏版）のための協奏曲も作曲しています。
吹奏楽曲: 『Four Movements for Brass Ensemble』、『Fantasy for Symphonic Band』、『Swiss Rhapsody』、『Missouri Overture』、『Save the Sea』など、演奏会用の吹奏楽曲を多数残しました。
室内楽・管楽アンサンブル: 多様な編成の管楽アンサンブルのための作品が豊富です。12本のホルンのための『Fantasy for Twelve Horns』、金管アンサンブルのための『Signal』、サクソフォン四重奏曲、オーボエとピアノのためのソナタなどがあります。
* その他: 映画音楽や放送用音楽も手がけており、ハンガリーのテレビシリーズ『Szomszédok』の主題歌などが知られています。また、大規模な金管アンサンブルのための『188 Bars for Brass』のような独特の編成の作品もあります。

彼の作品は、ハンガロトンなどのレーベルから多くの録音が出されており、特に管楽器作品を集めたアルバムが複数リリースされています。

ヒダシュ・フリジェシュは、その多才な作曲活動と特に管楽器分野への顕著な貢献により、20世紀後半から21世紀にかけてのハンガリー音楽を代表する作曲家の一人として記憶されています。

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