ヒットザターゲット

ヒットザターゲット：大賞典キラーの軌跡

日本の競走馬界にその名を刻んだヒットザターゲット。馬名の由来は「的に命中する」という、その競走生活を象徴するような力強い言葉です。その名の通り、数々の重賞競走で鮮やかな勝利を収め、特に「○○大賞典」と付く重賞レースで圧倒的な強さを誇ったことから「大賞典キラー」や「大賞典ハンター」の異名で知られています。

40戦を超える激闘の軌跡

ヒットザターゲットは40戦以上のキャリアを持ち、そのすべてが芝の競走でした。ダートを駆けることは一度もありませんでした。最も得意としたのは1800mから2000mの距離で、15回以上も出走しています。2000mを超える距離のレースにも10回以上挑戦しており、そのスタミナと持久力は並外れていました。

レースでは、中団から後方にかけて位置を取り、4コーナーで徐々にポジションを上げていく、いわゆる「差し」や「追い込み」を得意としていました。積極的に先頭に立つことはほとんどなく、最後の直線で驚異的な末脚を発揮してライバルたちを差し切るのが、ヒットザターゲットの持ち味でした。

そのキャリアの中で、多くの騎手がヒットザターゲットに騎乗しましたが、最多となる12回鞍上を務めたのは小牧太騎手でした。他の騎手たちも、ヒットザターゲットの能力を最大限に引き出すために、それぞれの技を駆使してレースに臨んでいました。

2歳から見せた才能と重賞制覇への道

2010年8月、2歳の新馬戦でデビューしたヒットザターゲット。初戦こそ4着に終わりましたが、その後も着実に経験を積み重ねていきました。そして、2011年6月、7戦目にしてようやく初勝利を掴みます。その後も勝利を重ね、2012年1月にはオープン入りを果たし、4月にはオープン競走でも勝利を挙げました。

そして、ついに2012年5月、新潟大賞典（GIII）で重賞初制覇を成し遂げます。この勝利は、ヒットザターゲットの潜在能力の高さを証明するものでした。しかし、続く宝塚記念、札幌記念、オールカマーといったGIレースでは思うような結果を残せず、苦戦を強いられる時期もありました。

大穴からの劇的勝利と伝説の京都大賞典

しばらく勝利から遠ざかっていたヒットザターゲットでしたが、2013年、小倉大賞典で重賞2勝目を飾ります。そして迎えた2013年10月、京都大賞典。このレースでは、ゴールドシップが圧倒的な1番人気に支持されていました。対してヒットザターゲットは11番人気と、誰もが予想しない大穴でした。しかし、レースでは後方から脚を伸ばし、直線でゴールドシップを捉え、見事な勝利を収めます。この劇的な勝利は、関係者のみならず、多くの競馬ファンに衝撃を与えました。単勝配当は166.2倍という高額なもので、馬単、3連単の配当金も史上最高額を記録しました。

この京都大賞典での勝利は、ヒットザターゲットの精神的な成長を物語るものでした。担当助手は、「以前は気難しかったが、走ることに真剣になった」とコメントしており、その努力が実を結んだ瞬間でした。このレースの後、ヒットザターゲットは「大賞典に強い馬」として広く知られるようになりました。

9勝目、そして静かな引退

京都大賞典以降もGI、GIIレースに挑戦を続けましたが、2014年は勝利を掴むことができませんでした。しかし、2015年5月、目黒記念で9勝目を挙げ、再びファンを沸かせました。そして、2018年3月、41戦の競走生活に幕を閉じました。JRAの競走馬登録を抹消され、引退後はJRA馬事公苑で乗馬として第二の人生を歩み始めました。現在では青森県立三本木農業高等学校馬術部で繋養され、引退名馬繋養展示事業の対象馬にも選ばれています。

40戦連続重賞出走というJRA記録を樹立したヒットザターゲット。その輝かしい功績は、多くの人々の記憶に深く刻まれています。大賞典キラーとして、そして一頭の競走馬として、その生涯は多くの感動と興奮を与え続けました。その伝説は、これからも語り継がれていくことでしょう。

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