ヒトツ

ヒトツ：オーストラリアを席巻したモーリス産駒の輝ける軌跡

オーストラリアで生産・調教された競走馬、ヒトツ。その名は、2021年のヴィクトリアダービー制覇をはじめ、2022年にはオーストラリアンギニーとオーストラリアンダービーを制するという輝かしい戦績で知られます。日本を代表する競走馬、モーリスを父に持ち、その血統と才能を受け継いだ逸材として、オーストラリア競馬史に名を刻みました。

華々しいデビューと幾多の試練

2020年、ゴールドコーストのマジックミリオンセールにて、10万ドルで落札。当時、まだ2歳だったヒトツは、ウェンディ・ケリー調教師の下、競走馬としてのキャリアをスタートさせます。ケリー調教師は、ヒトツの早熟性を見抜き、当初からその潜在能力の高さを高く評価していました。デビュー戦は、ブルーダイヤモンドプレリュード（G3）。結果は7着と、期待されたほどの成績ではありませんでしたが、この経験が後の活躍の礎となったことは間違いありません。続くブルーダイヤモンドステークス（G1）では10着に敗れ、続くサイアーズプロデュースステークス（G2）でも6着と、苦戦が続きました。

飛躍の転機と新たな挑戦

その後、ヒトツは調教師をキアロン・マーハーおよびデーヴ・ユースタスへと変更。そして、オジー・キール氏を新たな馬主として迎えます。新たな体制の下、ヒトツは未勝利戦を制し、初勝利を挙げます。続くコーフィールドギニー（G1）では5着と健闘するも、真価を発揮するのは、ヴィクトリアダービー（G1）でした。後方から追い込みを見せ、1番人気に応える圧巻の勝利。3歳でG1競走初制覇という快挙を成し遂げました。この勝利は、1956年のモンテカルロ以来となる快挙でもありました。

続くオーストラリアンギニー（G1）でも、5番人気ながら見事勝利。ヴィクトリアダービーに続きG1競走2連勝を達成しました。さらに、オーストラリアンダービー（G1）でも1番人気に応え、見事制覇。ヴィクトリアダービーとオーストラリアンダービーの両制覇は、史上3頭目という偉業となりました。そして、この3つのG1競走を制覇した馬は、ヒトツが史上初でした。これらのレースでは、馬場状態の悪化という困難にも見事に打ち勝ち、そのタフさと潜在能力の高さを改めて証明しました。

夢舞台への挑戦と惜しまれる引退

今後の目標として、コックスプレート、ジャパンカップ、メルボルンカップへの出走が検討されていましたが、残念ながら左前脚繋靭帯負傷により、ジャパンカップへの遠征は断念。その後、復帰に向けて調整が続けられていましたが、再び脚部不安を発症し、2023年1月31日、現役を引退することとなりました。

数々の栄光と惜しまれる引退。ヒトツの競走馬としてのキャリアは幕を閉じましたが、その輝かしい功績は、長く人々の記憶に刻まれることでしょう。そして、父モーリスと同じく、アローフィールドスタッドで種牡馬として新たな道を歩み始めます。その血統を受け継いだ新たなスターの誕生に期待が高まります。

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