ヒノキ新薬

ヒノキ新薬株式会社

東京都千代田区に本社を置くヒノキ新薬株式会社は、特定の天然由来成分に特化したスキンケア製品を手掛ける日本の企業です。その製品群は、一般的な「化粧品」とは一線を画し、「肌粧品（きしょうひん）」という独自の名称で展開されています。

同社の製品の中核をなす成分は、1936年に日本の化学者である野副鐵男博士によって発見されたヒノキチオールです。この成分は、ヒバの木などから抽出される天然物質であり、発見当初からその多様な特性が注目されてきました。ヒノキ新薬は、このヒノキチオールの可能性に着目し、肌への有用性を追求した製品開発を行っています。

会社の歴史は、ヒノキチオールの工業的な生産技術が確立された1950年代に始まります。1955年には、ヒノキチオールの抽出に必要なボイラーの製造が手掛けられ、これに深く関わったのが阿部武夫氏でした。そして翌1956年3月、阿部氏によってヒノキ新薬が設立されました。創業者の後を継ぎ、1976年には息子の阿部武彦氏が代表取締役社長に就任し、長期にわたり会社の経営を担ってきました。

ヒノキ新薬は、製品開発のみならず、企業文化の発信や顧客とのコミュニケーションにも注力してきました。1960年から長年発行されてきた広報誌「あすなろ」は、より発展的な媒体へと移行するため、2001年に休刊。これに代わる形で、同年に企業文化誌「エプタ（EPTA）」が創刊されました。「エプタ」は年5回発行されており、その名称はギリシャ語で「7」を意味します。これは、主成分であるヒノキチオールの分子構造が持つ7員環に由来しており、成分へのこだわりを示すものです。また、同社の広告戦略も注目され、2010年9月に講談社「VoCE」に掲載された広告は、そのクリエイティブが評価され、第54回日本雑誌広告賞のコスメティック部門で銀賞を受賞しています。

同社は、東京都千代田区の本社を中心に、全国規模のネットワークを展開しています。このネットワークは、製品を消費者へ届けるための販売会社、そして製品の研究開発、製造、管理などを担う系列会社、さらに社員や関係者のための付属施設から成り立っています。販売会社は、北海道に2社、東北（宮城）、首都圏（東京）、中部（愛知）、近畿圏（大阪）、四国（徳島）、広島、九州（福岡）といった主要な地域をカバーしています。系列会社には、静岡県にある研究開発を行う施設や、東京都内にある製造・販売関連の会社などが含まれます。また、北海道や滋賀県には保養施設、東京都内には製品や会社の歴史を紹介する「ヒノキチオール物語館」などの付属施設が設けられており、多岐にわたる機能が分散・連携して運営されています。

企業活動の側面では、スポーツ分野との関わりも見られます。2004年のアテネオリンピックシンクロナイズドスイミング競技で銀メダルを獲得した藤丸真世選手は、当時ヒノキ新薬に所属していました。また、過去には東海ラジオ放送の番組「TOKYO UPSIDE STATION」のコーナー提供を行うなど、メディアを通じたプロモーション活動も展開していました。

ヒノキチオールというユニークな成分への深い探求心と、「肌粧品」という独自の概念を通じて、ヒノキ新薬株式会社は創業以来、肌の健康と美を追求する事業を展開し続けています。その歴史は、成分発見の物語から始まり、全国に広がるネットワーク、そして企業文化の発信に至るまで、多角的な歩みを示しています。

もう一度検索