ヒマラヤザクラ

ヒマラヤザクラ (Prunus cerasoides)

ヒマラヤザクラは、バラ科サクラ属に分類される落葉性の高木です。原産はヒマラヤ地域で、標高1200mから2400mの高山に自生しています。その美しい花は、東アジアや南アジアの人々を魅了してきました。

特徴

ヒマラヤザクラは、自生地では30mに達することもある高木です。最大の特徴は、11月から12月にかけての冬に開花する点です。花は両性花で、淡いピンク色から白色へと変化します。樹皮は滑らかで光沢があり、卵型の実をつけます。実は熟すと黄色から赤色に変わります。

葉は互生で、縁には鋸歯があります。花がない時期でも、つややかな樹皮や葉の形状からヒマラヤザクラだと識別できます。

生態

ヒマラヤザクラは、水はけの良い肥沃なローム質の土壌を好みます。石灰質の土壌でも育ちますが、石灰分が多すぎるとクロロシス（葉の緑色が抜ける症状）を起こすことがあります。日当たりの良い開けた場所を好みます。

根は浅く広がり、傷つくと吸枝を出すことがあります。また、ナラタケなどのキノコに感染しやすい性質があります。

種子からの繁殖はやや難しく、発芽には2～3ヶ月の低温処理が必要です。冬の早い時期に土に埋めると発芽しやすくなりますが、発芽までに18ヶ月以上かかることもあります。

利用

ヒマラヤザクラの果実は食用となり、生食や料理に利用されます。種子も食用可能です。

幹からはガムが採取され、トラガカントガムの代用品として利用されます。

果実や葉は染料としても利用され、濃い緑色の染料が得られます。種子はネックレスやロザリオの材料として使われることがあります。

木材は硬く、香りも良く、耐久性があるため、家具や建築材として利用されます。また、枝は杖として利用されることもあります。

日本との関わり

日本には、ネパール王室から贈られたヒマラヤザクラが静岡県立熱海高等学校に植えられています。これは、1967年にビレンドラ皇太子（当時）が東京大学に留学していた際、熱海の植物友の会が桜と梅の種を献上したことへの返礼として贈られたものです。

現在では、熱海以外にも、豊橋市の普門寺、品川区立弁天通公園、戸越公園、大阪府吹田市の川園緑道などでヒマラヤザクラを見ることができます。

近年、ヒマラヤザクラは二酸化炭素や窒素酸化物の吸収率が高いことが注目されています。特に二酸化炭素の吸収率はソメイヨシノの約5倍とされ、地球温暖化対策への貢献が期待されています。

ただし、高山性の性質を持つため、日本の高温多湿な気候には馴染みにくい面があり、適切な管理が必要です。

参考文献

Plants for a future

関連項目

ヒカンザクラ - ヒカンザクラやカンヒザクラ群は、ヒマラヤザクラを祖先に持つと考えられています。

もう一度検索