ヒュンダイ・スクープ

ヒュンダイ・スクープ：韓国スポーツクーペの夜明けと影

ヒュンダイ・スクープは、現代自動車が1990年から1995年にかけて製造販売したクーペタイプの乗用車です。キャッチコピーは「スポーツパッションカー」。韓国初の2ドアクーペという称号を持ち、発売当時、若者を中心に大きな人気を博しました。しかし、その華やかなデビューの裏には、社会問題に発展する影も潜んでいました。

エクセルを起源とするスポーツクーペ

スクープの開発は、現代自動車の既存車種であるヒュンダイ・エクセルをベースに行われました。1989年の東京モーターショーでは「エクセルSLC」として参考出品され、翌1990年2月、正式名称「スクープ」として韓国市場に投入されました。車名は「Sports」と「COUPE」を組み合わせた造語です。

スクープは、エクセルと共通のホイールベース（2,385mm）やサスペンション形式（前マクファーソンストラット/後トレーリングアーム）を受け継いでいます。初期モデルには、三菱製の1,468ccオリオンエンジンを搭載していましたが、1991年には現代自動車独自開発の1,495cc αエンジンが搭載されるようになりました。αエンジンは、気筒あたり3バルブ（吸気2、排気1）のSOHCで、標準モデルは102馬力、ターボモデルは129馬力を発揮しました。

1992年にはマイナーチェンジを行い、ヘッドライトなどを含め、エクステリアデザインを変更しました。生産は1995年まで続けられました。

若者たちの憧れと、安全運転の問題

当時、韓国の自動車市場において、国産のスポーツクーペは非常に稀少でした。そのため、スクープは若者を中心に大きな人気を集め、スポーツカーブームを牽引しました。しかし、その一方で、スクープは危険な運転を助長する要因の一つともなったとの指摘もあります。

韓国では、スポーツカーに馴染みのないドライバーが多く、スクープの優れた運動性能を制御しきれないドライバーによる交通事故が多発しました。中には死亡事故も含まれており、社会問題として取り上げられることもありました。スクープが、必ずしも安全運転を促進する存在ではなかったという側面も、忘れてはならないでしょう。

韓国自動車産業における意義

突出した性能や装備こそありませんでしたが、スクープは韓国の自動車産業にとって大きな意味を持つモデルでした。韓国で初めて国産スポーツクーペとして市場に投入されたことで、若年層の購買意欲を高め、現代自動車のブランドイメージ向上に貢献しました。また、この経験は、現代自動車の技術開発、特にエンジン開発の進歩に大きく寄与しました。

現代自動車は、スクープの後継モデルとしてヒュンダイ・クーペを発売し、スポーツクーペ市場への挑戦を継続しました。スクープは、成功と課題の両方を抱えながら、韓国の自動車産業史にその名を刻んだ一台と言えるでしょう。

関連情報

ヒュンダイ・エクセル
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* αエンジン搭載車種

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