ヒューマン・ルネッサンス

ヒューマン・ルネッサンス

「ヒューマン・ルネッサンス」は、日本の人気グループサウンズ、ザ・タイガースが1968年に発表した通算3枚目のオリジナル・アルバムです。本作は、メンバーの加橋かつみが脱退前に参加した最後の作品としても知られています。

このアルバムが制作されるに至った背景には、当時の社会情勢やメンバーの強い意志が影響しています。特に、1968年6月22日に彼らが生出演したテレビ番組『木島則夫ハプニングショー』での出来事が大きな契機となりました。番組内で司会者との間に生じた意見の対立にメンバーが反発し、「平和を愛する」という彼らの思想を音楽で表現しようとする動機が生まれました。この平和への希求というテーマに基づき、アルバム全体のコンセプトは『旧約聖書』の世界観に置かれています。この壮大なコンセプトは、主に作曲家の村井邦彦氏と作詞家の山上路夫氏によってバンド側に提案され、採用されたものです。

それまでのザ・タイガースの楽曲は、シングル・アルバムともに外部の著名な作家陣によって提供されることがほとんどでしたが、本作ではメンバー自身も作曲を手がけている点が特筆されます。ギタリストの加橋かつみが「730日目の朝」を、同じくギタリストの森本太郎が「青い鳥」をそれぞれ作曲し、アルバムに収録しています。特に森本太郎作曲の「青い鳥」は、シングル盤としてもリリースされヒットしましたが、アルバムに収められているテイクはシングルとは異なるバージョンです。

アルバムは商業的にも成功を収め、当時のグループサウンズ人気を背景に、およそ20万枚近いセールスを記録したと言われています。収録曲の中では、「忘れかけた子守唄」が後にフォークシンガーの森山良子氏によってカバーされ、彼女のアルバム「カレッジ・フォーク・アルバム」（1969年）に収録されるなど、他のアーティストにも影響を与えました。

オリジナルLP盤はSMP-1420というナンバーでリリースされました。その後、CD時代に入ってからも何度か再発売されています。1990年には『ザ・タイガース / PERFECT CD BOX』（10枚組）の一部として初めてCD化（POCH-1054）。1992年には単独の作品としてもCDが発売され（POCH-1233）、さらに2002年にはオリジナルLPのジャケットデザインを復刻した形で再びCD化されるなど（UPCH-9018）、長くファンに愛される作品となっています。なお、初期のLP盤のクレジットには、作詞家と作曲家の情報は記載されていますが、レコーディングに関わったエンジニアや編曲者、演奏に参加したオーケストラ、ジャケットデザイン担当者などのスタッフ名は記されていませんでした。

収録曲

サイド1

光ある世界 (The glorious world) - 作詞: なかにし礼 / 作曲: すぎやまこういち
生命のカンタータ (Hymy for the birth) - 作詞: 山上路夫 / 作曲: 村井邦彦
730日目の朝 (The 730th morning) - 作詞・作曲: 加橋かつみ
青い鳥 (The blue bird) - 作詞・作曲: 森本太郎
緑の丘 (Green hill) - 作詞: 山上路夫 / 作曲: 村井邦彦
リラの祭り (Flower festival) - 作詞: なかにし礼 / 作曲: すぎやまこういち

サイド2

帆のない小舟 (The boat without sail) - 作詞: なかにし礼 / 作曲: すぎやまこういち
朝に別れのほほえみを (Morning smile for good-bye) - 作詞: 山上路夫 / 作曲: 村井邦彦
忘れかけた子守唄 (Lullaby for the lost son) - 作詞: なかにし礼 / 作曲: すぎやまこういち
雨のレクイエム (Endless rain) - 作詞: なかにし礼 / 作曲: すぎやまこういち
割れた地球 (The broken earth) - 作詞: 山上路夫 / 作曲: 村井邦彦
廃墟の鳩 (A white dove) - 作詞: 山上路夫 / 作曲: 村井邦彦

メンバー

レコーディング参加メンバーは以下の通りです。

沢田研二
加橋かつみ
森本太郎
岸部修三（現: 岸部おさみ）
* 瞳みのる

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