ヒロイン (長渕剛の曲)

長渕剛「ヒロイン」：情熱的な女性の恋心を綴ったレゲエ調楽曲

1980年10月5日、長渕剛の6枚目のシングル「ヒロイン」が東芝EMIからリリースされました。作詞・作曲・プロデュースは長渕剛自身、編曲は瀬尾一三が担当しています。3枚目のアルバム『乾杯』からのリカットで、女性の視点から、情熱的な恋模様を描いた楽曲となっています。

音楽性：レゲエと歌謡曲の融合

「ヒロイン」は、レゲエ調のリズムとアコーディオンやバンドネオンといった楽器の独特な組み合わせが特徴です。歌謡曲の要素も取り入れつつ、長渕剛の持ち味である力強いボーカルと、繊細なメロディーラインが織りなす世界観は、多くのリスナーを魅了しました。

音楽情報サイト『CDジャーナル』では、「泡沫の恋における女性の切なくも情熱的な想いを綴ったナンバー」と評されています。また、『別冊カドカワ 総力特集 長渕剛』では、楽曲のアレンジについて詳細な分析が掲載され、トム・ウェイツを思わせるトランペットの音色や、スライ＆ロビーの影響を感じさせるリズム隊、アコーディオンとバンドネオンの共存など、多様な音楽的要素が指摘されています。

長渕剛自身は後に、「演歌の人が歌えば良かったかも」と語っており、楽曲の持つ独特の雰囲気と、自身の表現方法との葛藤が垣間見えます。

チャート成績と収録アルバム

前作「順子/涙のセレナーデ|順子_涙のセレナーデ」がオリコンチャート1位を獲得しミリオンセラーを記録した一方、「ヒロイン」は最高29位と、商業的な成功は収めませんでした。オリコンチャート登場回数は10回、売上枚数は6万枚という結果に終わっています。

しかし、その音楽性は高く評価されており、『夏の恋人』（1981年）、『FROM T.N.』（1983年）、『SINGLES Vol.1 (1978〜1982)』（1997年）といったベストアルバムに収録され、現在も長渕剛の代表曲として聴き継がれています。

B面曲「Da! Da! Da!」

シングル「ヒロイン」のB面には、「Da! Da! Da!」が収録されています。アコースティックギターを前面に出した正統派のメッセージフォーク調楽曲ですが、アルバムには未収録となっています。

参加ミュージシャンとスタッフ

「ヒロイン」には、多くの実力派ミュージシャンが参加しています。

今泉正義（ドラムス）
武部秀明（ベース）
石川鷹彦（アコースティックギター）
長渕剛（アコースティックギター）
徳武弘文（エレクトリックギター）
山田秀俊（キーボード）
ペッカー（L-パーカッション）
トマトグループ（ストリングス）
風間文彦（アコーディオン）
池田光夫（バンドネオン）
* 山里剛（トランペットソロ）

プロデューサーには長渕剛、ディレクターには陣山俊一、山里剛、引田和幸が名を連ね、レコーディングには奥村誠二、村上輝生、石塚良一といった技術者陣が参加しています。

結論

「ヒロイン」は、商業的な成功は限定的であったものの、長渕剛の音楽性を示す重要な作品であり、多くのリスナーに長く愛され続けている楽曲です。レゲエ調のリズムと歌謡曲的なメロディー、そして個性的な楽器編成は、他の長渕剛作品とは一線を画す魅力を放ち、今もなお聴き手の心を掴んで離しません。その音楽的な価値は、ベストアルバムへの収録からも明らかです。

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