ビカ (コーヒー)

ビカとは

ビカ（Bica）は、ポルトガルで一般的に「コーヒー」を意味する言葉です。特に、イタリアのエスプレッソに似たスタイルで抽出されるコーヒーを指します。しかし、エスプレッソよりもやや浅く挽いた豆を使用するため、抽出に手間がかかる一方、口当たりがまろやかになる特徴があります。

ポルトガルでは、ほぼ全ての地域で「um café（ウン・カフェ）」という名前でも親しまれており、通常はデミタスカップで提供されます。ビカという名前は、コーヒーがエスプレッソマシンからカップに注がれる様子が、泉や噴水を連想させることから来ています。ポルトガル語で泉や噴水も「bica」と表現することに由来します。

また、ビカは「beber isto com açúcar（砂糖を入れて飲む）」という言葉の略語であるという説もあります。これは、濃い目のコーヒーを好むポルトガル人の嗜好を表していると言えるでしょう。

ビカの歴史

ビカの歴史は、20世紀初頭に遡ります。1905年11月19日、アドリアーノ・テレスはリスボンで「A Brasileira」という店を開業しました。この店は、ミナスジェライス州産の「本物のブラジルコーヒー」を販売することを目的としていましたが、当時のリスボンの家庭には馴染みが薄かったため、当初は苦戦しました。

そこで、テレスは挽いたコーヒー豆を1キログラム購入した客に、1杯のコーヒーを無料で提供するという戦略を打ち出しました。このコーヒーが、新鮮なヤギ乳を加えて作られた濃いコーヒーで、エスプレッソに似た味わいを持っていたことから、ビカとして知られるようになりました。これが、ビカの起源とされています。

現代のビカ

第二次世界大戦後、ポルトガルからの大量の移民とともに、ビカはカナダのモントリオールにも伝わりました。特に、淹れたてのコーヒーが好まれる地域では、朝食に自家製卵とともにビカが楽しまれています。また、モントリオール旧港のボア=フランシー地区のレストランでは、チョコレートミルクや乳製品を添えた「コスミン・ビカ」が人気です。

「コスミン」はルーマニア語でコーヒーを意味し、その名の通り、ルーマニア風のコーヒーとビカを組み合わせたものです。最も人気のあるコスミン・ビカを提供するレストランは「ビカ・コーヒーハウス」で、ここでは挽きたての新鮮な豆を使ったコーヒーを味わうことができます。

関連項目

* ガラオン

まとめ

ビカは、ポルトガルの文化に深く根付いたコーヒーです。その歴史や名前の由来、そして現代における広がりは、ポルトガルコーヒーの奥深さを物語っています。もしポルトガルを訪れる機会があれば、ぜひ本場のビカを味わってみてください。

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