ビクトリーアップ

ビクトリーアップは、1995年12月に競走馬デビューを果たしましたが、芝のレースでは思うような結果を残せず、その後ダート中距離路線に挑戦するも、勝利には至りませんでした。 才能が開花するまでには、平地競走での苦戦、去勢手術、そして長期の放牧期間を経験する必要がありました。

転機となったのは、1997年の夏。平地競走での低迷を受け、ビクトリーアップは障害競走への転向を決断します。那須トレーニングセンターで障害競走のトレーニングを開始すると、持ち前の能力が花開き始めました。

1998年4月、障害競走に初挑戦。4戦目で初勝利を挙げると、勢いに乗って400万以下競走も制し、オープン入りを果たしました。続く東京障害特別（秋）では2着と好成績を残し、中山大障害（秋）への弾みをつけます。

そして迎えた中山大障害（秋）。ビクトリーアップは、55キロという軽量ハンデを生かし、後方から力強い追い込みを見せます。2着馬メジロファラオに1.7秒差をつける圧勝劇で、重賞初制覇を達成しました。この勝利は、鞍上の横山義行騎手にとって重賞初勝利、そして吉永正人調教師にとって開業10年目にして初の重賞制覇という、大きな喜びをもたらしました。

しかし、栄光は長くは続きませんでした。1999年、阪神スプリングジャンプで11着に敗れると、続く中山グランドジャンプでも4着と結果を残せませんでした。そして、京都ジャンプステークスでレース中に故障が発生。惜しまれつつも、競走馬としての道を閉ざされました。

引退後は、東武動物公園内の乗馬クラブクレインにて乗用馬として余生を過ごしました。しかしながら、2001年末、腸捻転により死亡。短いながらも輝かしい競走馬人生の幕を閉じました。

ビクトリーアップの血統背景にも注目すべき点があります。祖母スイートベルンの仔には、ニュージーランドトロフィー4歳ステークス優勝馬ユーワジェームスや朝日杯3歳ステークスで3着に入ったカゲマルなどがいます。さらに、近親には京都ハイジャンプを制したタマモグレアーや阪神ジャンプステークスで3着に入ったタマモサプライズなど、活躍馬が多数存在します。この血統背景が、ビクトリーアップの潜在能力の高さを示唆していると言えるでしょう。

ビクトリーアップの競走馬としての軌跡は、平地競走での苦悩、障害競走への転向、そして重賞制覇というドラマチックな展開で彩られていました。短い期間でしたが、その活躍は多くの競馬ファンに感動を与え、今もなお語り継がれる存在となっています。 彼の物語は、才能が開花するまでの道のりは必ずしも平坦ではないこと、そして努力と勇気をもって新たな道に進むことの大切さを教えてくれます。彼の記憶は、競馬史に刻まれた貴重な一頁として、これからも語り継がれていくでしょう。

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