ビジネスプロセスモデリング表記法

BPMN（ビジネスプロセスモデリング表記法）とは

ビジネスプロセスモデリング表記法（Business Process Model and Notation, BPMN）は、ビジネスプロセスをワークフローとして視覚的に表現するための標準的な記法です。これにより、ビジネスプロセスを関係者間で共有し、理解を深めることが可能になります。

BPMNは、当初Business Process Management Initiative (BPMI)によって開発されましたが、BPMIとObject Management Group (OMG)が2005年に合併した後は、OMGがその保守を担当しています。最新版であるBPMN 2.0は2011年に発行され、2013年には国際規格ISO/IEC 19510として認定されました。

BPMNの目的

BPMNの主な目的は、ビジネスプロセス管理（BPM）を実現するために、すべてのビジネス関係者が理解しやすい標準的な記法を提供することです。また、ビジネスプロセス管理システム（BPMS）の実装を支援するための表記法でもあります。BPMNは、実務者、ビジネスアナリスト、技術者、マネージャーなど、プロセスに関わるすべての関係者間のコミュニケーションを円滑にする役割を担います。

BPMNの適用範囲と限界

BPMNは、ビジネスプロセスを中心とした概念のモデリングに特化しており、組織構造、機能の詳細化、データモデルなどのモデリングには適していません。また、データフロー図とは異なり、データの流れとアクティビティの関係を図示しますが、具体的なデータの流れを詳細に表現するものではありません。

BPMNの利用

BPMNは、ビジネスプロセスの可視化や分析、改善に広く利用されています。BPMNモデルは、主に以下の3種類に分類されます。

1. 個別ビジネスプロセス：特定の組織内のプロセスを指し、一般にワークフローやBPMプロセスと呼ばれます。スイムレーンを用いて表現される場合、一つのプール内に含まれ、プロセス内のシーケンスフローはプールを越えません。ただし、メッセージフローはプール境界を越えて他の個別プロセスとの相互作用を表すことができます。

2. 抽象プロセス：個別ビジネスプロセス間の相互作用を表し、直接関係しない詳細部分は表示されません。メッセージフローを中心に、プロセス間のやり取りを表現します。

3. 協業プロセス：複数の組織間の相互作用を表現し、メッセージ交換パターンとしてアクティビティのシーケンスを定義します。各レーンが関係者間のやり取りを表すこともあります。

BPMNの図（BPD）の種類

これらのBPMNサブモデルから、様々な図（BPD）を作成できます。以下は、BPMNでモデル化できるビジネスプロセスの種類の一部です。

高度に抽象化された個別プロセス
詳細な個別ビジネスプロセス
現在または従来のビジネスプロセス
将来または新規のビジネスプロセス
複数の個別ビジネスプロセスの相互作用
詳細な個別プロセスと抽象プロセス、協業プロセスとの関係

これらの組み合わせにより、複雑なビジネスプロセスも可視化できますが、伝えたい内容を明確にして、適切なレベルで図示することが重要です。

BPMNの要素

BPMNモデルは、以下の要素で構成されます。

フローオブジェクト：
イベント：円で表し、プロセスの開始、中間、終了などの出来事を表します。
アクティビティ：角を丸めた四角形で表し、タスクやサブプロセスなど、実行される作業を表します。
ゲートウェイ：菱形で表し、プロセスの分岐や結合などの決定ポイントを表します。

接続オブジェクト：
シーケンスフロー：実線矢印で表し、アクティビティの実行順序を示します。
メッセージフロー：破線白抜き矢印で表し、プロセス間のメッセージのやり取りを示します。
関連：破線で表し、フローオブジェクトと成果物との関連を示します。

スイムレーン：
プール：大きな長方形で表し、プロセス全体を包含します。
レーン：プール内を部署や役割などで区分けします。

成果物：
データオブジェクト：BPMN2.0から意味を持つようになり、プロセス内で受け渡されるデータや変数を表します。

その他：
グループ：異なる作業をグループ化します。
注釈：図を理解するための注釈を記載します。

BPMN 2.0

BPMN 2.0では、記法、メタモデル、交換形式が統合され、単一の仕様として定義されました。これにより、異なるツール間でのモデル交換が容易になり、モデルの意味的な一貫性が保たれるようになりました。

BPMN 2.0の主な機能は以下の通りです。

BPMNとBPDM(business process definition meta model)を統合
ツール間でのビジネスプロセスモデルと図の配置の交換
モデルの統合（オーケストレーション、コレオグラフィ）
異なる視点でのモデル表示と交換
ビジネスモデリングと経営者の意思決定支援の拡張
XMLでの表現（直列化）

まとめ

BPMNは、ビジネスプロセスを標準化された方法で視覚化し、共有するための強力なツールです。その柔軟性により、さまざまな種類のプロセスをモデリングし、組織内のコミュニケーションと効率を向上させることができます。

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