ビデオシングルディスク

ビデオシングルディスク（Video Single Disc, VSD）は、CDビデオ（CD VIDEO）から派生したフォーマットであり、その特徴は、CDビデオが持つ5分間の映像部にビデオ映像のみを収録し、オーディオCDパートを完全に省いた点にあります。

フォーマットの特徴

VSDのディスクには、CD VIDEOのロゴマークではなく、『CDV』と表記され、さらにレーザーディスクのロゴマークも併記されているのが特徴です。これは、CDビデオとレーザーディスクという二つのフォーマットの技術を融合させた、過渡期的な製品であることを示唆しています。トラックの記録は2番から開始されており、これはCDビデオと互換性を持たせるための措置と考えられます。一部のディスクには「（トラック1）オーディオ・パートの音声は収録されておりません」という注意書きが記載されており、音声トラックが存在しないことを明確にしています。

ディスクを目視で確認すると、内周部にオーディオトラック、外周部にビデオトラックが存在する構造は、CDビデオと全く同一です。この構造は、既存のCDビデオプレーヤーとの互換性を維持するために、ビデオパートの記録領域を拡張できなかったという制約を示唆しています。技術的な制約の中で、映像のみを収録するという新たなフォーマットを確立しようとした試みが見て取れます。

ビデオシングルディスクのロゴマークは、1980年代にCBS・ソニーやEPIC・ソニーから発売されていた映像ソフト『VIDEO LP』、『VIDEO SINGLE』、『VIDEO MOVIE』各シリーズに付けられていたマークと同一です。これらのシリーズは、音楽プロモーションビデオを収録したものであり、VSDが同じ流れを汲んでいることがわかります。つまり、VSDは音楽プロモーションビデオを1曲単位で発売するという、新たな市場開拓を狙ったフォーマットであったと言えます。

市場での評価

VSDは、音楽プロモーションビデオを1曲単位で手軽に楽しめるフォーマットとして注目されました。しかし、1枚1,200円という価格設定が消費者にとって魅力的でなかったため、市場に広く普及するには至りませんでした。当時、ビデオテープに比べて高価であったことや、再生できるプレイヤーが限られていたことなどが、普及を妨げる要因になったと考えられます。

結局、VSDは、その技術的な革新性にも関わらず、市場に定着することはなく、短命に終わりました。しかし、音楽ビデオをシングル単位で販売するというコンセプトは、後のDVDやデジタル配信へと引き継がれ、今日の音楽コンテンツ消費の一つの流れを作ったと言えるでしょう。

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