ビューティフル (漫画)

『ビューティフル』は、さいとうちほによる漫画作品で、2004年から2006年まで『プチコミック』（小学館）に不定期連載されていました。単行本は全4巻で刊行されています。

あらすじ

1986年、ウクライナのベラローザ村で、少年・悠里は両親と妹の杏奈と幸せに暮らしていました。バレエダンサーである母親から才能を受け継いだ悠里は、ボリショイ・バレエ学校への入学を夢見ていました。しかし、チェルノブイリ原子力発電所事故によって、一家の運命は大きく変わります。被爆した母親のため、そしていつかボリショイ劇場の舞台で踊ることを夢見て、悠里は家族と離れバレエ学校へ入学します。9年後、17歳になった悠里はバレエ学校でトップの成績を誇るまでになります。しかし、そこへ母親の訃報が届き、悠里は妹・杏奈のためだけに生きることを誓います。互いに惹かれ合う2人でしたが、兄妹であるが故に決して結ばれることのない禁断の愛の物語が描かれています。

登場人物

主人公

悠里（ゆうり）／ユーリ・レルモントフ：
天才的なバレエの才能を持つ主人公。両親ともにバレエダンサーで、8歳の時にチェルノブイリ原発事故で被爆。時折頭痛に悩まされます。
杏奈（あんな）／アンナ・レルモントワ：
悠里の2歳年下の妹で、父親が異なる。6歳の時に被爆し、時々熱っぽくなる症状があります。悠里に想いを告げますが、彼のバレエへの情熱を尊重し、修道院に入る決意をします。

家族

杏里（あんり）：
悠里と杏奈の母親で、旧姓は桜庭。元バレエダンサーで、ボリショイ劇場で踊った経験も持ちます。被爆後も病に苦しみながらも、悠里の成長を楽しみにしていました。
アリョーシャ：
杏奈の父親で軍人。原発事故の消火活動中に被爆し、後に死亡します。

バレエ関係者

朝比奈 くるみ（あさひな くるみ）：
那智バレエ団に所属するプロのバレエダンサーを目指す少女。父子家庭で、静岡から週に3回通っています。
那智 冴子（なち さえこ）：
那智バレエ団の責任者で、視力が弱い。杏里が日本にいた頃に所属していました。
天宮 水紀（てんぐう みずき）：
パリで天宮バレエ団を立ち上げた責任者兼振付家。25名の団員を率いています。
名雪（なゆき）：
21歳。天宮バレエ団員で、バレエのために家出をしています。コンクールで水紀にスカウトされ、高校を中退し、水紀についてきました。
朝倉 珠音（あさくら じゅね）：
18歳。日本人で、パリ・オペラ座のバレエ団員。14歳でオペラ座バレエ学校に留学し、芸術監督に才能を認められ、奇跡的に入団を果たしました。
キマイラ：
キマイラ・バレエカンパニーの主宰者で、国際的に有名なロシアの振付家。本名はアンドレイ・オルロフで、悠里の実父です。
春木 風羽子（はるき ふうこ）：
留学生で、バレエオタクの20歳。卒論のテーマは「バレエとダンサーと美についての考察」。大学卒業後は舞踊ジャーナリストとして悠里を追いかけます。
紫堂 犬太郎（しどう けんたろう）：
キマイラ・バレエカンパニーに委託され、悠里のマネージャー兼スポーツ医療士となる。通称、ドクター・シド。後に風羽子と結婚します。

逸話

作者のさいとうちほは、ラジオ番組で本作品を「源氏物語のつもりで描いた」と語っています。主人公の悠里は「光源氏」のように様々な女性と恋をするが、「紫の上」にあたる本命の相手は妹の杏奈であるという構成です。読者からは、主人公には一途であってほしいという声が多く、作品完結までは女性遍歴を重ねる展開は不評だったとも語っています。

書誌情報

さいとうちほ 『ビューティフル』 小学館〈フラワーコミックス〉 全4巻

2004年9月24日発売、ISBN 4-09-130027-8
2005年7月26日発売、ISBN 4-09-130176-2
2006年9月26日発売、ISBN 4-09-130598-9
2007年5月25日発売、ISBN 978-4-09-131057-6

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