ビルギット・クルベリ

ビルギット・クルベリ

ビルギット・クルベリ（Birgit Ragnhild Cullberg、1908年8月3日 - 1999年9月8日）は、スウェーデンの優れたダンサー、振付家、さらにはバレエ指導者として知られています。彼女はクルト・ヨースやマーサ・グレアムから影響を受け、ドイツ表現主義舞踊の流れを汲む独自の作品を数多く創作しました。

生い立ちと教育

クルベリはスウェーデン南部のニュヒェーピングで裕福な家庭に生まれ、父は銀行家でした。もともとは文学を志してストックホルム大学で学んでいましたが、24歳でバレエに目覚め、亡命ロシア人のヴェラ・アレクサンドロワから指導を受け始めました。彼女が本格的なダンサーとしての道を進むきっかけとなったのは、27歳の時に観たクルト・ヨースの『緑のテーブル』でした。この作品は反戦をテーマにしたもので、深い印象を彼女に与えました。

キャリアの始まり

1935年から1939年にかけてイギリスに渡り、ヨースの舞踊学校で学び、その後ニューヨークに移ってマーサ・グレアムにも師事しました。1942年には初のソロ公演を開催し、その後反ナチス運動にも参加しました。戦後の1946年、彼女はスヴェンスカ・ダンス・シアターを設立し、ヨーロッパ各地で公演を行いました。

彼女の転機となった作品が1950年の『令嬢ジュリー』です。この作品はスウェーデン王立バレエ団に注目され、クルベリ自身は1952年から1956年まで同団の常任振付家を務めました。その後、フリーランスの振付家として活動し、デンマーク王立バレエ団やアメリカン・バレエ・シアターなどで多くの作品を振り付けました。

クルベリ・バレエ団の設立

1967年にスウェーデンに戻ったクルベリは、政府とストックホルム市による支援を受けて新たなカンパニーであるクルベリ・バレエ団を設立しました。彼女は60歳近い年齢ではありましたが、精力的に団を運営し、創作に取り組みました。クルベリ・バレエ団はすぐにヨーロッパ有数のバレエ団としての評価を確立しました。

最後の舞台と影響

ダンサーとしてのクルベリの最後の舞台出演は68歳のとき、息子のマッツ・エックが振り付けた『ソウェト』でした。また、1980年からは息子と共同でクルベリ・バレエの芸術監督を務めましたが、1985年にその役をマッツに譲りました。彼女は1991年にテレビ向け作品『オールドウーマン&ザ・ドア』にも出演し、その後1999年にストックホルムで亡くなりました。

作風と評価

クルベリの作品は、ドイツ表現主義の影響を色濃く受けており、特に『令嬢ジュリー』は彼女の代表作です。この作品ではクラシック・バレエの技術とモダン・ダンスの要素を融合させ、作品の深いテーマを表現しました。また、ギリシャ悲劇やイプセンの作品に触発された作品も多く、彼女は自身が台本を手掛けることで独自の文学的視点を持ち込んでいます。

さらにクルベリは、テレビ向けのバレエ作品を制作した先駆者としても高く評価されています。彼女の革新性は、後の世代の振付家たちにも多大な影響を与えました。特に息子たちのニクラスとマッツ、さらには多くの著名な振付家たちに影響を与えたことでも知られています。

クルベリの生涯にわたる活動と彼女が築いたバレエのスタイルは、現在も多くのダンサーや振付家にインスピレーションを与え続けています。

もう一度検索