マーサ・グレアム

マーサ・グレアム：モダンダンスの巨匠

マーサ・グレアム（1894年5月11日-1991年4月1日）は、20世紀を代表するアメリカ人舞踏家、振付師であり、モダンダンスの開拓者として広く知られています。ペンシルベニア州で生まれ、カリフォルニア州でダンスの世界に足を踏み入れました。10代の頃、ルース・サン・デニのダンスに感銘を受け、プロダンサーを目指し、デニショーン・ダンサー養成所に入学。

独自のダンスカンパニーと革新的なスタイル

1926年、自身のダンスカンパニー「マーサ・グレアム・ダンスカンパニー」を設立。これは彼女にとって大きな転機となります。音楽家のルイス・ホーストとの協力関係は、彼女の芸術活動に大きな影響を与えました。グレアムは、収縮と開放を特徴とする独特のダンススタイルを確立し、当時のモダニズム芸術を反映した表現を生み出しました。そのスタイルは、感情の深層を表現する力強さと、身体表現の繊細さを併せ持ち、多くの人々を魅了しました。

教育者としての顔とニューヨークでの活躍

グレアムは、ダンサーとしての活動と並行して、教育にも尽力しました。イーストマン音楽院、ベニントン大学、ニューヨーク大学などで教鞭をとり、後進の育成に貢献しました。ニューヨークを拠点に活動する中で、彼女は著名なダンサー、マーサ・ヒルと協働し、ジュリアード音楽院でも教鞭をとるなど、影響力を拡大していきました。

代表作「Chronicle」と社会への反映

1936年の代表作「Chronicle（年代記）」は、世界恐慌やスペイン内戦といった当時の暗い社会情勢を反映した作品として高く評価されました。静謐な舞台装置と衣装を背景に、人間の葛藤や孤独を表現したこの作品は、当時の観客に大きな衝撃を与え、グレアムの芸術性の高さを示すものとなりました。

国際的な活躍と後継者育成

グレアムは、アメリカにとどまらず、国際的にも活躍しました。イスラエルのバテシバ・ダンスカンパニーのディレクターに就任するなど、世界各地でダンス界に貢献しました。多くの弟子を育て、その中には、日本のダンサーも含まれています。彼女独自のダンスメソッドである「コントラクション・アンド・リリース」は、現在でも多くのダンサーに影響を与え続けています。このメソッドは、呼吸と身体の動きを結びつけることで、より奥深い表現を可能にするものです。

晩年と評価

晩年は振付に専念し、1991年に96歳で亡くなるまで創作活動を続けました。1976年には、大統領自由勲章を受賞。TIME誌では「20世紀のダンサー」に選ばれ、20世紀を代表する重要な人物の1人として称えられています。彼女の作品は、今もなお世界中で上演され、多くの人々に感動を与え続けています。 Googleのロゴにも採用されたことは、彼女の偉大な功績を物語っています。

作風と影響

グレアムのダンスは、重いテーマや物語を扱い、身体の動きによって人間の深層心理を表現することに特徴があります。装飾性を排し、打楽器的なリズムを重視した振付は、他のダンサーたちにも多大な影響を与えました。彼女の弟子であるイサム・ノグチは、彼女の舞台装置も担当するなど、芸術家同士の協力関係も注目に値します。

参考文献

Graham, Martha (1991). Blood Memory: An autobiography.
Freedman, Russell (1998). Martha Graham: A Dancer's Life.
* その他多数

もう一度検索