ビルマ社会主義計画党

ビルマ社会主義計画党（BSPP）の興亡：ミャンマーにおける一党支配体制

ビルマ社会主義計画党（BSPP、英語名：Burma Socialist Programme Party）、通称マサラは、1962年のネ・ウィン将軍によるクーデターを成功させた後、1988年までミャンマー（当時ビルマ）において、事実上の独裁政権を維持した政党です。本稿では、その設立から解党までの歴史、党内構造、そして8888民主化運動との関わりについて詳細に解説します。

設立と党の一元化

1962年3月2日、ネ・ウィンはクーデターを実行し、ウー・ヌ首相以下政府高官を逮捕、議会を解散、憲法を停止しました。全権を掌握したネ・ウィンは革命評議会を設立し、同年4月30日には『ビルマ社会主義への道』を発表。社会主義経済システムの確立を謳い、既存政党との協力も模索しましたが、交渉は決裂。7月4日、ネ・ウィンを議長とするビルマ社会主義計画党（BSPP）が設立されました。

1964年3月28日には国家統一法が施行され、BSPP以外の政党活動は禁止。ミャンマーは事実上、BSPPの一党支配体制下に入りました。初期のBSPPは、党基盤の整備に注力し、実権はネ・ウィンの側近と地方司令官からなる革命評議会が握っていました。党組織は、軍管区に対応した地域本部、地区本部、そして郡レベルの支部から構成され、党幹部は国軍将校が中心でした。中央政治学学校（後に大学に改編）も設立され、党幹部養成が行われました。

党中心の国家運営と民政移管

1971年6月の第1回党大会以降、BSPPは本格的に党中心の国家運営体制を構築しました。中央委員会と中央執行委員会が設置され、党内意思決定の中枢となりました。中央委員会は党本部、地区本部、そして国軍代表から構成され、国軍の影響力は依然として強大でした。しかし、1972年には、党と軍の分離を目的とした人事が行われ、多くの軍関係者が退役しました。

1973年には新憲法が国民投票で承認され、翌1974年1月には新憲法に基づく選挙が実施されました。憲法には「BSPPは唯一の政党であり、国家を指導する」と明記され、事実上、信任投票となりました。3月2日、ネ・ウィンは大統領に選出され、「民政移管」が宣言されました。しかし、人民議会や国家評議会もBSPP党員、特に国軍関係者が多数を占めており、ネ・ウィンの独裁体制は制度的に維持されました。立法過程においても、BSPP中央執行委員会が事実上の最高意思決定機関として機能していました。

民政移管後も、党と軍の関係調整は続きました。1977年、第3回党大会では、中央執行委員の刷新が行われましたが、軍関係者の影響力も残っていました。ネ・ウィンの党内での地位低下や軍部との対立が表面化した時期でもあります。

8888民主化運動と解党

1988年、経済危機を背景に、全国的な大規模デモ（8888民主化運動）が発生しました。7月23日、ネ・ウィンは党議長を辞任し、複数政党制を問う国民投票の実施を発表しました。しかし、状況は悪化の一途を辿り、各地でBSPPからの離党が相次ぎました。9月には、国軍関係者がBSPPを離脱し、憲法11条（一党制を規定）が廃止されました。

9月18日、国軍がクーデターを実行し、国家秩序回復評議会（SLORC）が設立されました。9月26日、選挙への参加を目的として、BSPPは国民統一党（NUP）と改名し、その歴史に幕を閉じました。

まとめ

BSPPは、ネ・ウィンによるクーデターから始まり、一党支配体制を確立したものの、8888民主化運動を機に崩壊しました。その歴史は、ミャンマーにおける軍事政権と社会主義政策、そして民主化運動の複雑な関係を示す重要な事例となっています。党内構造や政治過程の詳細な分析は、今後のミャンマー政治研究においても重要な課題です。

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