ビルング家

ビルング家は、中世ドイツにおいて10世紀から12世紀初頭にかけてザクセン大公を世襲した有力な貴族です。ビッルング家とも呼ばれます。

起源と台頭

ビルング家の先祖に関する明確な記録は残されていませんが、9世紀のザクセンの伯リウドルフの妻オーダがビルング家出身であるという説があります。このことから、ビルング家は当時すでにザクセン地方において一定の勢力を持っていたと考えられます。

ビルング家の歴史において重要な転換点となったのは、936年に国王オットー1世がヘルマン・ビルングを東部国境の辺境伯に任命したことです。この任命は、ビルング家がザクセン大公を世襲する足がかりとなりました。ヘルマン・ビルングは、スラヴ人に対する防衛の最前線に立ち、その功績によってザクセンにおける地位を確立しました。

ザクセン大公の世襲

ヘルマン・ビルングの子であるベルンハルト1世の時代に、ビルング家は正式にザクセン大公の地位を獲得しました。ベルンハルト1世以降、ビルング家は4代にわたってザクセン大公位を世襲し、ザクセン地方の政治・経済・軍事において大きな影響力を行使しました。

ビルング家は、その支配下において、ザクセン地方の発展に大きく貢献しました。都市の建設や交易の振興、教会の保護など、様々な政策を推進し、ザクセン地方の文化的な発展にも寄与しました。

家系の終焉とその後

しかし、ビルング家の繁栄は長くは続きませんでした。最後の大公マグヌスには男子後継者がなく、娘が二人いました。娘たちはそれぞれヴェルフ家のバイエルン公ハインリヒ9世（黒公）とアスカーニエン家のバレンシュテット伯オットー（裕福伯）と結婚しました。その結果、ザクセン公位はヴェルフ家とアスカーニエン家の間で争われることとなり、ビルング家の血を引く両家の子孫が後にザクセン公となりました。

ビルング家の血筋は、ヴェルフ家とアスカーニエン家を通じて後世に受け継がれましたが、ビルング家そのものは歴史の表舞台から姿を消しました。しかし、その足跡はザクセン地方の歴史に深く刻まれ、今日でもその名を知られています。

系図

リウドルフ伯爵家と姻戚関係
ヘルマン・ビルング：936年辺境伯任命
ベルンハルト1世：ザクセン大公
マグヌス：後継者不在により断絶

参考文献

瀬原義生 『ドイツ中世前期の歴史像』 文理閣、2012年
下津清太郎 編 『世界帝王系図集 増補版』 近藤出版社、1982年
コルヴァイのヴィドゥキント、三佐川亮宏 訳 『ザクセン人の事績』 知泉書館、2017年

関連項目

ザクセン大公

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