ビレ・アウグスト

ビレ・アウグスト（Bille August）

デンマークを代表する映画監督、テレビドラマディレクター。1948年11月9日、デンマークに生まれる。

経歴と初期の活動

青年期にはスウェーデンのストックホルムにおいて写真教育を受け、視覚的な表現手法の基礎を築いた。その後、故郷デンマークのコペンハーゲンの国立映画学校に進学し、本格的に映画製作の技術と理論を学んだ。この期間に培われた経験が、後の彼のキャリアの礎となる。

国際的な評価とパルムドール受賞

ビレ・アウグストの名が世界に知られるようになったのは、1988年に公開された映画『ペレ』によってである。スウェーデン移民の少年とその父親が新しい生活を求めて旅する姿を描いたこの作品は、観る者に深い感動を与え、カンヌ国際映画祭で最高賞であるパルムドールを獲得した。さらに、同作はアカデミー賞の外国語映画賞も受賞し、その評価は国際的に不動のものとなった。

この成功に続き、彼はスウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマンの脚本をもとにした『愛の風景』（1992年）を監督する。ベルイマンの両親の若き日々を描いたこの人間ドラマは、再びカンヌ国際映画祭でパルムドールに輝いた。これにより、ビレ・アウグストはカンヌの歴史において、わずか数年の間に二度も最高賞を獲得するという稀有な偉業を達成した監督の一人となった。この二度のパルムドール受賞は、彼の演出手腕と物語を紡ぐ力が高く評価された証である。

その後の活動と主な作品

カンヌでの輝かしい成功の後も、ビレ・アウグストは国際的な舞台で精力的に活動を続けた。イサベル・アジェンデの小説を映画化した『愛と精霊の家』（1993年）では、メリル・ストリープ、ジェレミー・アイアンズ、グレン・クローズといった名優たちを起用し、南米の激動の時代を背景にした家族の物語を描いた。また、ペーター・ホゥのミステリー小説を原作とした『陰謀のシナリオ』（1997年）や、ヴィクトル・ユーゴーの名作を再映画化した『レ・ミゼラブル』（1998年）など、多様なジャンルの作品を手がけている。

近年では、マンデラ元大統領の看守との交流を描いた『マンデラの名もなき看守』（2007年）や、パスカル・メルシエの哲学小説を映画化した『リスボンに誘われて』（2013年）など、文学作品の映画化や実話に基づく物語にも意欲的に取り組んでいる。また、短編作品が集められたオムニバス映画『それぞれのシネマ』（2007年）にも参加するなど、その活動の幅は広い。

以下に、彼の主な監督作品の一部を挙げる。

『子供たちの城』 Zappa (1983)
『ツイスト&シャウト』 Tro, håb og kærlighed (1984)
『ペレ』 Pelle erobreren (1987) - カンヌ国際映画祭 パルムドール受賞
『愛の風景』 Den goda viljan (1992) - カンヌ国際映画祭 パルムドール受賞
『愛と精霊の家』 The House of the Spirits (1993)
『エルサレム』 Jerusalem (1996)
『陰謀のシナリオ』 Smilla's Sense of Snow (1997)
『レ・ミゼラブル』 Les Misérables (1998)
『それぞれのシネマ』 Chacun son cinéma ou Ce petit coup au coeur quand la lumière s'éteint et que le film commence (2007) - オムニバス映画の一編
『マンデラの名もなき看守』 Goodbye Bafana (2007)
『リスボンに誘われて』 Night Train to Lisbon (2013)
『サイレント・ハート』 Stille Hjerte (2014)
* 『デスティニー・イン・ザ・ウォー』 烽火芳菲 (2017)

ビレ・アウグスト監督は、繊細な人間描写と美しい映像表現を特徴とし、社会的なテーマや家族の絆などを深く掘り下げる作品を多く生み出してきた。テレビドラマディレクターとしても活動しており、その才能は多岐にわたる。二度のパルムドール受賞という輝かしいキャリアは、彼が現代映画史において重要な位置を占める監督であることを証明している。

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