ビロウドサシガメ

ビロウドサシガメ

ビロウドサシガメ（学名：Ectrychotes andreae）は、カメムシ目に属するサシガメ科の昆虫の一種です。その名の通り、ややビロードのような質感を持つとも言われる黒っぽい体に、鮮やかな赤や黄色の模様が特徴的な、地上性のサシガメとして知られています。

特徴

ビロウドサシガメは、体長が約14mmと比較的大型で、頑丈ながらもやや扁平な体つきをしています。全身は藍色を帯びた黒を基調としますが、部分的に黄色や赤色の斑紋が見られます。

頭部は藍黒色で光沢があり、黒い複眼と紅色の単眼を持ちます。触角は4つの節で構成され、表面には細かい毛が密生しています。第一節が最も太く、第三節は二つ、第四節は四つの微小な節に分かれているように見えます。

前胸背も藍黒色で、後方へ向かって幅が広がる形状ですが、中央部がややくびれています。幅広くて多数のしわが見られる横溝、中央の縦溝、そして後方部の縁沿いにも縦溝があります。小楯板の後端には、小さな歯のような三つの突起があり、中央の突起は他の二つよりも短い特徴があります。

前翅は黒色または黒褐色で、根元の部分が黄色くなっています。腹部の側面は全体に黄色みがかって見えますが、第4節から第6節にかけての後半は藍色を呈します。さらに、第1節と第2節の内側全体が赤く色づいています。体の下面は基本的に藍黒色ですが、腹部の中心部がはっきりとした紅色に染まるのが大きな特徴です（まれに黄色の場合もあります）。

歩脚は藍黒色ですが、転節、および中脚と後脚の腿節の根元部分は紅色です。前脚の腿節の先端内側や脛節の根元には、淡い色の斑紋が見られます。また、各脚の脛節の先端部や跗節には、褐色の毛が多く生えています。

地域による変異

琉球列島に生息するビロウドサシガメは、本州などで見られる個体とわずかに異なる特徴を持ちます。琉球産のものは、腹部側面の黄色や赤色の部分が本土産のように途切れ途切れではなく、全体的に連続して赤色を呈する傾向があります。また、腹部下面の赤色部分の範囲も、より広い傾向が見られます。

分布および生態

ビロウドサシガメは、日本の本州、四国、九州、対馬、小笠原諸島、そして南西諸島に広く分布しています。国外では、朝鮮半島、中国、台湾、インドネシアからも記録されています。

主に雑草の茂る地面の上や、石の下などを生息環境としています。植物の根元や落ち葉の下に潜み、他の昆虫や多足類などの小型動物を捕らえて餌とします。特に、本種が属するビロウドサシガメ亜科の多くの種は、ヤスデ類を好んで捕食することが知られています。

近似種など

ビロウドサシガメが属するビロウドサシガメ属（Ectrychotes）は、アジアの熱帯地域を中心に約60種が確認されていますが、日本国内に自然分布しているのはこのビロウドサシガメ（Ectrychotes andreae）のみです。

同じビロウドサシガメ亜科には、本種とは異なる属に属する種も日本にいくつか生息しています。これらの種も多くは黒い体に赤色の模様を持つ点でビロウドサシガメと共通しますが、一般的にはビロウドサシガメよりも赤色の部分が体のより広い範囲を占める傾向があります。

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