ピアノソナタ第13番 (シューベルト)

シューベルト：ピアノソナタ第13番 イ長調 作品120, D 664

フランツ・シューベルトによって1819年の夏頃に作曲されたピアノソナタ第13番は、イ長調 作品120、整理番号 D 664として知られる作品です。全三楽章から成る比較的小規模なソナタですが、その優雅で親しみやすい旋律から、多くの音楽愛好家に長く愛されています。シューベルトのイ長調によるピアノソナタには、後年の傑作である第20番（D 959）があり、しばしば「イ長調の大ソナタ」と呼ばれるため、本作は区別して「イ長調の小ソナタ」と称されることもあります。演奏時間は概ね24分程度です。

楽曲の構成

このソナタは以下の三つの楽章で構成されています。

第1楽章：Allegro moderato（アレグロ・モデラート）

イ長調、4分の4拍子のソナタ形式。穏やかなテンポで開始され、楽章冒頭に現れる特徴的な音形の進行が印象的に繰り返されます。主題提示部、展開部、再現部というソナタ形式の標準的な構成を持ち、再現部では提示部の内容が再現されます。明快で抒情的な楽章です。

第2楽章：Andante（アンダンテ）

ニ長調、4分の3拍子。遅めのテンポで演奏されるこの楽章では、四分音符一つと八分音符四つから成る特徴的なリズムが全体を特徴づけます。長調と短調が繊細に織り交ぜられた旋律は、微妙な陰影を生み出し、深みのある感情を表現しています。

第3楽章：Allegro（アレグロ）

イ長調、8分の6拍子のソナタ形式による終楽章です。速いテンポで、モーツァルトを思わせるような明るく軽快な旋律から始まります。活き活きとしたリズムと、華やかな音階のパッセージが印象的に現れ、楽曲に推進力と輝きを与えます。明快で愉悦に満ちたこの楽章が、ソナタ全体を華やかに締めくくります。

このピアノソナタ第13番は、シューベルトの初期のソナタに位置づけられますが、既に彼特有の歌心と優れた形式感覚が表れています。その親しみやすさと優美さから、シューベルトのピアノ作品の中でも特に人気の高い作品の一つです。

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