ピアノ協奏曲第1番 (モーツァルト)

ピアノ協奏曲第1番 ヘ長調 K. 37

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが手がけた初めてのピアノ協奏曲であり、ケッヘル目録では第1番、K. 37に分類されています。この作品は、モーツァルトが1767年に作曲した初期のピアノ協奏曲4曲のうちの最初に位置づけられていますが、これは彼自身の完全な創作ではなく、他の作曲家による既存の作品を基にした編曲であることが研究によって明らかになっています。

作品の背景と成り立ち

この協奏曲は、モーツァルトが11歳だった1767年4月にザルツブルクで作曲されました。この時期、彼はクラヴィーアやチェンバロのための協奏曲を意欲的に編曲しており、本作はその一連の試みの一つです。後の詳細な研究により、この第1番の協奏曲は、主に先行する作曲家たちのソナタを素材として構成されていることが判明しました。

具体的には、第1楽章はヘルマン・フリードリヒ・ラウパッハの『ヴァイオリンソナタ ヘ長調 作品1-5』を、第3楽章はレオンツィ・ホーナウアーの『クラヴィーアソナタ ヘ長調 作品2-3』をそれぞれ編曲したものです。第2楽章については、その出典は特定されておらず、モーツァルト自身によるオリジナルの創作である可能性も指摘されています。

この作品の楽譜の大部分は、父レオポルト・モーツァルトの手によって書かれており、作曲あるいは編曲作業においてレオポルトが深く関与していたと考えられています。この作品を含む初期の4曲のピアノ協奏曲の手稿譜は、現在ポーランドのクラクフにあるヤギェウォ大学図書館に所蔵されています。

楽器編成

この協奏曲の演奏に必要な楽器編成は以下の通りです。

独奏ピアノ（またはクラヴィーア/チェンバロ）
オーボエ 2
ホルン 2
ヴァイオリン 2部
ヴィオラ
バス（チェロとコントラバスは区別されず、当時の慣例に従います）

楽曲構成

全3楽章で構成されており、全体の演奏時間は約16分です。第2楽章と第3楽章の終わりには、独奏者のためのカデンツァの挿入が指定されています。

1. 第1楽章 アレグロ
ヘ長調、4分の4拍子によるソナタ形式で書かれています。軽快で活発な主題が特徴的です。

2. 第2楽章 アンダンテ
ハ長調、4分の3拍子による緩徐楽章です。穏やかで叙情的な旋律が奏でられます。

3. 第3楽章 （アレグロ）
ヘ長調、4分の3拍子によるロンド形式です。括弧付きの速度表示であり、快活な主題が繰り返され、華やかに締めくくられます。

この作品は、若きモーツァルトが協奏曲という形式に触れ、オーケストラの扱い方や独奏楽器と管弦楽の相互作用を学ぶ初期の習作として重要な位置を占めています。他者のアイデアを吸収し、自身の音楽語法へと昇華させていく過程が垣間見える興味深い作品と言えるでしょう。

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