ピアノ協奏曲第17番 (モーツァルト)

モーツァルト：ピアノ協奏曲第17番 ト長調 K. 453

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトが1784年に作曲したピアノ協奏曲第17番 ト長調 K. 453は、彼の協奏曲創作における重要な時期を彩る傑作の一つです。

作曲背景と初演

1784年のウィーンで、モーツァルトは目覚ましい活躍を見せていました。彼は卓越したピアニストとして連日のように演奏会に登場し、また良家の子女に作曲やピアノを教える教師としても多忙な日々を送っていました。本作は、まさにこの活気に満ちた時期、1784年に集中的に生み出された一連の優れたピアノ協奏曲群（第14番から第19番、俗に『第2戴冠式』と呼ばれる作品まで）のうちの一つとして位置づけられます。具体的には、この協奏曲は1784年4月12日にウィーンで完成されました。

この作品は、モーツァルトの弟子であり、才能豊かな女性ピアニストであったバルバラ・プロイヤーのために書かれました。モーツァルト自身の手紙によれば、1786年6月13日にウィーン郊外にあるプロイヤー邸でバルバラ自身によって初めて演奏されたとされています。しかし、それ以前にモーツァルト自身がウィーンでこの作品を演奏する機会があったとも考えられています。

作品の特徴と評価

ピアノ協奏曲第17番は、技巧的な面でピアニストに過度な負担を強いることなく、しかしながら豊かな音楽的内容を持つように配慮されています。特に1784年に作曲された6曲のピアノ協奏曲の中でも、この作品は非常に高く評価されており、モーツァルト自身もこの作品に対して肯定的な見方を示していたと言われています。

後世の音楽家たちもこの作品の価値を認めています。例えば、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番は、このモーツァルトの協奏曲を規範の一つとしているという指摘があります。また、フランスの作曲家オリヴィエ・メシアンは、この作品について次のような賛辞を贈っています。

>「モーツァルトが書いた中で最も美しく、変化とコントラストに富んでいる。第2楽章のアンダンテだけで、彼の名を不滅にするに十分である」

この言葉からもわかるように、特に第2楽章は作品全体の魅力を際立たせています。

さらに、モーツァルトの直弟子であり、ベートーヴェンのライヴァルとしても知られたピアニスト・作曲家のヨハン・ネポムク・フンメルが1805年頃に作曲した『ヴァイオリンとピアノのための二重協奏曲』も、このモーツァルトの第17番と同じト長調を採用しており、第1楽章の冒頭の雰囲気など、旋律や性格において共通する部分が指摘されています。これは、フンメルが師であるモーツァルトのこの作品から音楽的なインスピレーションを受けて作曲した可能性を示唆しています。

楽器編成

この協奏曲は、以下の楽器編成で演奏されます。

独奏ピアノ
フルート
オーボエ 2
ファゴット 2
ホルン 2
弦五部（ヴァイオリン2部、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）

曲の構成

全3楽章構成で、全曲の演奏時間はおよそ30分程度です。

第1楽章：アレグロ
ト長調、4分の4拍子、協奏風ソナタ形式で書かれています。活気に満ちた楽章です。

第2楽章：アンダンテ
ハ長調、4分の3拍子、三部形式です。メシアンが絶賛した、美しく叙情的な旋律が歌われる楽章です。

* 第3楽章：アレグレット - プレスト
ト長調、2分の2拍子、変奏曲形式です。提示された主題が様々な形で変奏された後、速度を速めた軽快なコーダで華やかに締めくくられます。

ピアノ協奏曲第17番 K. 453は、モーツァルト円熟期の協奏曲の中でも特に親しみやすく、深みのある魅力を持った作品であり、その後の世代の作曲家たちにも影響を与えた重要な位置を占めています。

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