ピアノ協奏曲第2番 (モーツァルト)

ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 K.39

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトによって手掛けられたピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 K.39は、彼の数ある協奏曲作品の中でも初期に位置づけられるものです。この作品は、彼自身がゼロから創作したものではなく、他の作曲家による既存の楽曲を基に編曲された作品であり、その点は先行する第1番と同様の特徴を持っています。

作曲の背景と経緯

第1番から第4番に至るモーツァルト初期のピアノ協奏曲群は、いずれも他者の作品からの編曲によって構成されています。この第2番は、1767年の6月頃にザルツブルクにて完成されました。当時わずか11歳であった若きモーツァルトが、こうした編曲作業を行った背景には、異国の地、特に彼が旅行で訪れたパリで触れた様々な音楽作品から、当時発展途上にあった協奏曲というジャンルの形式や構成技法を学び取る目的があったと考えられています。パリでは1760年頃からヨハン・ショーベルトの音楽が大きな流行を見せており、若きモーツァルトは彼の作品から強い影響を受けていたことが知られています。このような異文化圏での音楽体験が、彼の後の創作活動に多大な影響を与えたと言えるでしょう。

原曲となった作品

この協奏曲は、複数の作曲家による異なる作品を組み合わせる形で構成されています。具体的には、第1楽章と第3楽章には、ヘルマン・フリードリヒ・ラウパッハが作曲したヴァイオリン・ソナタ作品1の第1番が、そして第2楽章には、モーツァルトが影響を受けたヨハン・ショーベルトによるチェンバロ・ソナタ作品17の第2番がそれぞれ基盤となっています。異なる作曲家によるソナタ楽章を巧みに組み合わせ、独奏楽器とオーケストラによる協奏曲という新たな形式へと再構築する作業は、当時のモーツァルトにとって重要な学習プロセスであり、後の彼の偉大なオリジナル協奏曲群を生み出す上での礎となりました。

楽器編成

本作品の楽器編成は以下の通りです。

独奏ピアノ
オーボエ 2
ホルン 2
ヴァイオリン 2部
ヴィオラ
バス

独奏ピアノが主役となり、オーケストラがそれを支えたり、対話したりしながら楽曲が進行します。

楽曲の構成

楽曲は伝統的な3つの楽章で構成されており、全曲を通しての演奏時間はおよそ16分程度です。各楽章は以下の通りです。

第1楽章： アレグロ・スピリトーソ 変ロ長調、4分の4拍子。活気に満ちた開始楽章です。
第2楽章： アンダンテ・スタッカート ヘ長調、2分の2拍子（アラ・ブレーヴェ）。穏やかで表情豊かな緩徐楽章です。
* 第3楽章： モルト・アレグロ 変ロ長調、4分の2拍子。軽快で華やかな終楽章です。

まとめ

ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 K.39は、モーツァルトが巨匠への道を歩む最初期に、先行する優れた作品を分析し、再構成することを通じて協奏曲という形式への理解を深めた貴重な作品です。他者の音楽から多くを学び取る柔軟性と探求心が、後の彼の独創的な傑作群の誕生へと繋がっていきました。この作品は、単なる編曲に留まらず、若き天才の学習プロセスと、将来の輝かしい創造活動への布石を示す重要な位置を占めていると言えるでしょう。

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