ピアノ協奏曲第22番 (モーツァルト)

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトによって1785年12月16日にウィーンで完成された「ピアノ協奏曲第22番 変ホ長調 K. 482」は、彼の創作活動において重要な位置を占める作品です。

概要と背景

同年に発表された第20番（ニ短調 K. 466）や第21番（ハ長調 K. 467）といった傑作の後、モーツァルトの協奏曲は次第に作曲家自身の内面をより深く反映する傾向を強めていきます。本作もこの流れの中にあり、特に同時期に書かれた第23番（イ長調 K. 488）とは編成上の共通点が見られます。例えば、両作品ではオーボエが用いられず、代わりにクラリネットが導入されており、これはモーツァルトの新しい音色への探求を示す試みと言えるでしょう。

楽器編成

この協奏曲の楽器編成は以下の通りです。

独奏ピアノ
フルート1
クラリネット2
ファゴット2
ホルン2
トランペット2
ティンパニ
弦五部（ヴァイオリン2部、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）

構成と全体像

全体は3つの楽章で構成され、一般的な演奏時間は約34分です。同じ時期の作品である第23番が持つ甘美な魅力と比較すると、人気においては一歩譲るかもしれませんが、本作も随所に聴きどころを持つ「佳作」として評価されています。特に、典雅かつ祝祭的な雰囲気に満ちた開始楽章、物思いに沈むような深い情感を湛えた短調の緩徐楽章、そして生命力溢れる旋律美を持つ終楽章と、それぞれ異なる表情を見せる点が魅力です。

各楽章詳細

第1楽章：アレグロ

変ホ長調、4分の4拍子、ソナタ形式。
自身が過去の交響曲でも用いた、モーツァルトが好んだ独特の音型で幕を開けます。しっかりとした構成感を持ちながらも、後期の一連の協奏曲に共通する、管楽器群による対位法的な巧みな掛け合いが随所に聴かれ、豊かな響きを生み出しています。

第2楽章：アンダンテ

ハ短調、8分の3拍子、変奏曲形式。
モーツァルトの後期作品に特徴的な、深く内省的な雰囲気を漂わせる緩徐楽章です。主調であるハ短調と関連調である変ホ長調の間を行き来し、中間部ではハ長調へと転調するなど、ドラマチックな調性変化が印象的です。また、チェロとコントラバスを実音で2オクターブ（記譜上は1オクターブ）離して重ねるなど、音響的な工夫も凝らされています。

第3楽章：アレグロ

変ホ長調、8分の6拍子、ロンド形式。
ロンド主題は驚くほど簡潔な旋律ですが、そこから発展する音楽は極めて多彩で、豊かな楽想によって楽曲全体が彩られます。特に注目すべきは中間部で、ここでは突如4分の3拍子となり、「アンダンティーノ・カンタービレ」（やや遅く、歌うように）と指示された、クラリネットによる変イ長調の甘く美しい旋律が歌われます。この部分は、しばしばこの楽章のハイライトと見なされます。

編曲

本作品は、モーツァルトの弟子であったヨハン・ネポムク・フンメルによって、ピアノ四重奏（ピアノ、フルート、ヴァイオリン、チェロ）用に編曲されています。この編曲版は現在でも演奏されており、例えばピアニストの白神典子らによる録音が存在します。

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