ピエドラス・ネグラス

ピエドラス・ネグラス：古代マヤの壮大な都市遺跡

ピエドラス・ネグラスは、現在のグアテマラ、ペテン地方のウスマシンタ川北岸に位置する古典期マヤ文明の重要な遺跡です。遺跡名はスペイン語で「黒い石」を意味し、これは建造物に使用された石の色に由来します。古代マヤ語では「大きな門」または「入り口」を意味する「Yo'k'ib（ヨキブ）」と呼ばれていました。

遺跡の構造と特徴

遺跡は西グループ、東グループ、南グループに分かれており、それぞれに球戯場や広場が設けられています。アーチ状の屋根を持つ宮殿や神殿ピラミッドが立ち並び、中には洞窟と繋がっているものもあります。ウスマシンタ川の川岸には、ヨキブの紋章文字が刻まれた巨石が残されています。

王国の歴史

ピエドラス・ネグラスは、ウスマシンタ川流域で一時は最大の勢力を誇った王国の首都でした。紀元前7世紀中頃から定住が始まり、紀元850年頃に放棄されました。紀元450年頃には、ライバルのヤシュチランの碑文に敗者として記録されるなど、既に重要な都市センターとなっていたことがわかります。紀元608年から紀元810年にかけて彫刻と建築が最も活発に行われ、この時代にキニチ・ヨナル・アーク1世が即位しました。この時代以降、ヤシュチランとの抗争に加え、ペテン地方の勢力とも争うことになります。他のマヤ王国が衰退していく中で、ピエドラス・ネグラスの芸術活動は紀元8世紀後半に最盛期を迎えました。モニュメントには「芸術家の署名」が多く見られるのが特徴です。しかし、紀元808年にヤシュチランとの戦争に敗れた後、紀元810年を最後に長期暦を刻んだ彫刻は作成されなくなり、都市は終焉を迎えました。都市が放棄される前に、モニュメントが故意に破壊された形跡があり、これは反乱や征服があったことを示唆しています。ただし、ウスマシンタ川は重要な交易路であり、王国滅亡後も人が住んでいた形跡があります。

研究史

ピエドラス・ネグラスの名が文献に初めて登場したのは1892年。その後、写真家のテオベルト・マーラーが遺跡を訪れ、ハーヴァード大学ピーボディー博物館から報告書が発行されました。1931年からはペンシルベニア大学博物館による発掘プロジェクトが開始され、リントン・サタースウェイト・ジュニアが責任者として調査が行われました。タチアーナ・プロスクリアコフは、この発掘プロジェクトに復元図を作成する画家として参加し、後に考古学者としてマヤ文字の解読に貢献しました。彼女は、石碑に王の誕生、即位、没年月日が刻まれていることを発見し、マヤ王朝の歴史を解明しました。

グアテマラ内戦終結後、1997年から2000年にかけて大規模な発掘調査が実施され、新たな発見がありました。

ピエドラス・ネグラスは、古代マヤ文明の歴史、社会、文化を理解するための貴重な情報を提供してくれる、重要な遺跡です。

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