ピエモンテ州とロンバルディア州のサクリ・モンティ

サクリ・モンティ：北イタリアの聖なる山々

サクリ・モンティ（Sacri Monti）は、イタリアのピエモンテ州とロンバルディア州に点在する九つの「聖なる山」を指し、ユネスコの世界遺産に登録されています。これらの聖なる山は、15世紀から18世紀にかけて、宗教的な動機と文化的背景のもとに造営されました。

歴史的背景

15世紀、エルサレムへの巡礼が困難になった時代、巡礼の代替地としてサクリ・モンティの造営が始まりました。1480年頃にヴァラッロに最初の聖山が築かれ、その後、16世紀のトリエント公会議を受けて、プロテスタントの宗教改革に対抗する目的で、ヴァラッロをモデルとした新たな聖山の造営が加速しました。特に、ミラノ司教カルロ・ボッロメーオの支援は大きく、クレーア、オルタ、ヴァレーゼなど、多くのサクリ・モンティが誕生しました。18世紀以降も造営は続きましたが、この頃の建築は宗教的な動機が薄れ、デザインに変化が見られます。

サクリ・モンティを構成する主な施設

以下に、世界遺産に登録されている各サクリ・モンティの特徴を説明します。

ヴァラッロのサクロ・モンテ: 1480年頃に造営された初期のサクロ・モンテで、エルサレムを模して作られたことから「新エルサレム」とも呼ばれます。数多くの彫刻とフレスコ画が残り、キリストの受難を表現しています。16世紀の対抗改革の影響を受け、ナザレやベスレヘムを模したレイアウトに変更され、45の教会がメイン通り沿いに建っています。
クレーアのサクロ・モンテ: 1589年に造営され、サンタ・マリア・アッスンタに捧げられています。23の教会と5つの住居跡が残っており、静かで落ち着いた雰囲気です。
オルタのサクロ・モンテ: サン・フランチェスコに捧げられ、3つの期間に分けて造営されました。初期のものは1590年から1630年頃までで、より古い様式が見られます。17世紀末まではバロック様式、18世紀末までは脱バロック様式が用いられました。
ヴァレーゼのサクロ・モンテ: ロザリオに捧げられています。1474年から巡礼地となり、1604年から本格的な造営が始まりました。多額の寄付金が集まり、1623年までに13の教会が完成し、1698年には全ての教会が完成しました。彫像やフレスコで装飾され、教会、井戸、噴水などの様式が変化に富んでいます。
オロパのサクロ・モンテ: ベアータ・ヴェルジネに捧げられています。
オッスッチョのサクロ・モンテ: ベアータ・ヴェルジネ・ディ・ソッコルソに捧げられています。
ギッファのサクロ・モンテ: サンタ・トリニタに捧げられています。
ドモドッソラのサクロ・モンテ: カルヴァリオのサクロ・モンテとして知られています。
ヴァルペルガのサクロ・モンテ: ベルモンテのサクロ・モンテとも呼ばれています。

世界遺産としての価値

サクリ・モンティは、以下の世界遺産登録基準を満たし、登録されました。

(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すもの。 サクリ・モンティは、宗教的動機と対抗宗教改革の影響を受けながら、建築、芸術、景観デザインが相互に影響を与え合った結果、独特な景観を形成しました。これらの施設は、当時の文化的な価値観や信仰を現代に伝える重要な証拠です。
* (4) 人類の歴史上重要な時代を例証する建築様式、建築物群、技術の集積または景観の優れた例。 サクリ・モンティは、15世紀から18世紀にかけての宗教建築と景観デザインの発展を反映しており、歴史的に重要な時代の優れた例として評価されています。巡礼の代替地としての役割、対抗宗教改革の象徴としての意味など、その歴史的意義は大きいと言えるでしょう。

サクリ・モンティは、単なる宗教施設にとどまらず、美術、建築、文化、歴史など、多様な側面から人類の遺産として重要な価値を有していると言えるでしょう。

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