ピエロ・ディ・コジモ・デ・メディチ

ピエロ・ディ・コジモ・デ・メディチ（1416年 - 1469年）は、フィレンツェの事実上の支配者であったコジモ・デ・メディチの息子として生まれました。重度の痛風を患っていたため、「痛風病みのピエロ」とも呼ばれていました。

父コジモは、フィレンツェにおけるメディチ家の地位を確立した人物でしたが、ピエロは病弱であったため、後継者としての期待は薄かったとされています。しかし、父の死後、ピエロはメディチ家の当主の座を継承することになります。

当主となったピエロは、反メディチ派の勢力増大という危機に直面します。1466年には、反メディチ派と結んだフェラーラがフィレンツェを攻撃しますが、これを撃退し、反メディチ派を追放することで、国内体制を立て直しました。1469年に53歳で死去し、息子のロレンツォ（イル・マニーフィコ）がメディチ家の当主を継ぎました。

ピエロ自身は政治的な影響力はそれほど大きくなかったものの、芸術パトロンとしての活動は非常に活発でした。ベノッツォ・ゴッツォリやサンドロ・ボッティチェッリといった芸術家を見出し、彼らを支援しました。また、豪奢な書斎をメディチ邸内に造らせるなど、美術品コレクターとしても知られています。特に、アンドレア・デル・ヴェロッキオはピエロの強力な支援を受け、多くの作品を制作しています。

ヴェロッキオは、父コジモの時代から支援を受けていましたが、1460年代後半にはピエロのパトロンシップによって、多くの仕事を任されるようになりました。ピエロは、ヴェロッキオに「聖トマスの懐疑」を発注した商業裁判所の評議会メンバーであり、また、フィレンツェ大聖堂の円球の制作委嘱に関しては、ヴェロッキオへの支払い代理人を務めています。また、ブロンズ像の「イルカと天使」と「ダヴィデ像」も1470年代初頭の作品ですが、これらもピエロの依頼によるものです。ヴァザーリによれば、「イルカと天使」はピエロの別荘の噴水のために注文されたもので、後にヴェッキオ宮殿の中庭に移されました。現在、レプリカがヴェッキオ宮殿の中庭の噴水に展示されており、本物は宮殿併設の美術館の3階に展示されています。

ピエロは、偉大な父コジモと、その息子で有名なロレンツォという二人のメディチ家の当主に挟まれた存在であり、当主としての期間も短かったため、やや影の薄い存在と見られがちです。しかし、彼の芸術活動の保護、アッルミエーレにおける明礬の独占権獲得、そして後継者としてロレンツォを育て上げ、適切なタイミングで継承させたことなどは、彼の功績として挙げられます。

ピエロは、1444年にルクレツィア・トルナブオーニと結婚し、6人の子供をもうけました。成人したのは、ビアンカ（グリエルモ・デ・パッツィの妻）、ナンニーナ（ベルナルド・ルチェライの妻）、ロレンツォ（メディチ家当主）、ジュリアーノ（パッツィ家の陰謀により殺害）の4人です。

参考文献
東洋書林　クリストファー・ヒバート著『メディチ家の盛衰』上巻
森田義之『メディチ家』（講談社現代新書　1999年）

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