ピエール・ショデルロ・ド・ラクロ

ピエール・アンブロワズ・フランソワ・ショデルロ・ド・ラクロの生涯と業績

ピエール・アンブロワズ・フランソワ・ショデルロ・ド・ラクロ（1741年10月18日 - 1803年9月5日）は、フランス・アミアン出身の砲兵士官であり、著名な小説『危険な関係』の作者です。彼の名前に関しては、フランス語話者の間で発音についての議論が絶えません。これに関しての一例として、ロジェ・ヴァイヤンの著書『彼自身によるラクロ』において、彼が手書き原稿に「Choderlot de Laclos」と記していたことが示されています。このように、彼自身は「ショーデルロ」と発音していたと考えられています。また、日本語では「コデルロス」という表記も使われています。

ラクロは北フランスのアミアンで育ったものの、彼の家系に特別な貴族性はありませんでした。彼は軍人を志し、1760年に18歳で砲兵学校に入学。1761年3月に少尉に任官し、その後、ストラスブール、グルノーブル、ブザンソン、ヴァランスといった地方都市を転々としながら衛戍隊の士官としての生活を送りました。特に1768年から約7年間滞在したグルノーブルでは社交界でも注目を集め、これが後の『危険な関係』の創作に大きな影響を与えました。

彼が影響を受けた人物の一人として、メルトゥイユ侯爵夫人が挙げられます。彼女のモデルとして、ラ・トゥール・デュ・パン・モンモールがあったのではないかとも言われています。また、1777年7月にはリコボニ夫人の小説を喜歌劇に改作し、コメディ・イタリエンヌ座で上演しましたが、これは失敗に終わりました。1780年代には西フランスのレ島に赴任し、モンタランベール元帥のもとで要塞構築に従事しながら、『危険な関係』を執筆しました。

彼の著作には、1783年に発表した「女子教育について」があります。この作品では、男女同じくらい女性の教育が重要であると説いています。さらに、1786年には当時の築城家であるヴォーバンを批判する文書をアカデミー・フランセーズに提出しましたが、これにより軍当局との間にトラブルが生じ、ラクロは1788年に軍職を退くことになります。しかし、セギュール元帥の推薦でオルレアン公フィリップの側近となり、1787年にマリ＝ソランジュ・デュベレと結婚しました。夫婦としての生活は幸せであったと言われています。

しかし、1789年にフランス革命が勃発すると、ラクロはオルレアン公に随行し、90年にはパリに帰還。その後、ジャコバン党に加入し、機関誌の編集に関与しました。1771年のヴァレンヌ逃亡事件以降、王太子の即位とオルレアン公の摂政実現に向けて活動しますが、思うような成果を上げられず、再び軍に復帰します。

92年9月には旅団長に昇進しますが、93年3月にはオルレアン公とともに反革命の罪で逮捕され、一時的に釈放されますが、11月にも再逮捕され約1年間ピクピュス監獄に収容されました。1794年にはポール・バラスの助言で釈放されました。1799年にはブリュメール18日のクーデターに参加し、ナポレオン・ボナパルトの知遇を得て、1800年には砲兵少将に任命されることになります。

彼の生涯は、やがてナポリ派遣軍の司令官に任命されたが、62歳で赤痢に罹り、亡くなりました。ラクロは1782年に発表した『危険な関係』で特に知られています。この作品は南部フランスの貴族たちの生活を背景に、道徳的退廃と社会問題を鋭く描写しています。この小説は当時多くの批判を浴びながらも広く読まれ、現在でも文学の名作として愛されています。彼のその他の著作としては「女子教育について」などがありますが、『危険な関係』以外はあまり広く知られていません。

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