ピサ大聖堂

ピサ大聖堂：ロマネスク建築の傑作

ピサ大聖堂は、イタリア・トスカーナ州ピサのドゥオモ広場に位置する、ロマネスク建築を代表する壮麗な大聖堂です。この広場は、1987年にユネスコ世界遺産に登録されており、大聖堂、洗礼堂、墓所回廊、そして有名なピサの斜塔といった複数の建築物が一体となり、その美しさから「奇跡の広場」とも呼ばれています。

歴史的背景

11世紀、トスカーナ地方の都市が自治権を持つ時代に、ピサは交通の要所として繁栄を遂げました。その富と権力を象徴する場として、ピサ大聖堂が建設されることになります。1064年、ピサがアラブ勢力との海戦で勝利したことを記念し、建設が開始されました。ギリシア人建築家ブスケットの設計と指導のもと工事は進められ、12世紀にはライナールドがファサードを完成させました。

大聖堂の建設には約半世紀を要し、その後、1152年には洗礼堂、1173年には鐘塔の建設も始まり、これらが現在のドゥオモ広場を形作っています。

建築様式と特徴

ピサ大聖堂はロマネスク建築を基調としていますが、ローマ時代の建築様式も取り入れています。これは、イタリア各地に残るローマ時代の遺跡から資材やヒントを得ていたためです。また、ビザンティン文化の影響も受け、多様な時代の建築様式が融合しています。

バシリカ式（十字架型平面形）：大聖堂は、初期キリスト教会の形式を受け継ぐバシリカ式で、十字架型の平面を持ちます。身廊と側廊、翼廊から構成され、合理主義の傑作とも評されています。身廊は五廊式、翼廊は三廊式で、交差部には楕円形のドームが設けられています。

ドーム（中央の塔）：レンガと石で造られたドームは、1090年に建設されました。当初は外壁で囲まれた塔でしたが、現在は石造りのドームがむき出しになっています。これは、フィレンツェの教会様式を取り入れたものです。ドームを取り巻くアーケードは、1383年に完成しました。

洗礼堂：洗礼堂は、直径約35m、高さ約55mの白大理石で造られた建築物です。1152年に建設が始まり、完成までに200年を要しました。下部はロマネスク様式、上部はゴシック様式で、これは建設中にゴシック様式が取り入れられたためです。また、長い反響音を持つことで知られており、職員による声楽デモンストレーションが定期的に行われています。

建築技術

石造ヴォールト：石造ヴォールト技術の発展により、身廊や側廊の窓を大きくすることが可能になりました。

列柱廊：列柱廊は、壁の外側の厚さを減らすのに役立っています。石造ヴォールトと列柱廊の発達は、採光と装飾の工夫に貢献しました。これらの技術は、後のゴシック建築にも影響を与えています。

アーチと柱：ファザード外側のアーチと柱は、荷重を軽減する役割を持ち、連続して並べることで壁の負担を減らしています。これは、ゴシック建築の特徴的な手法です。

装飾

大理石パネル：ファサードは、さまざまな色の大理石パネルを組み合わせた装飾が施されています。古典建築を模倣しつつも、装飾の豊かさが特徴的です。

アーケード：外側アーケードは、ロマネスク様式における装飾的な手法として発展しました。

大理石の帯：大聖堂の外壁には、色の異なる大理石が水平の縞模様に配置され、中央イタリアの建築物特有の装飾となっています。

妻壁：妻壁には、リズミカルに並んだ柱の列と、カラフルな大理石が使われ、ピサ大聖堂の個性を際立たせています。

身廊：身廊の両脇には、宗教的な絵画や像が飾られた側廊が付属し、石造ヴォールトと列柱が身廊の壁を支えています。

後陣：後陣の半円蓋は、13世紀初頭に製作されたモザイクで装飾されています。

ピサ大聖堂は、その美しい建築様式と歴史的背景から、世界中から多くの観光客が訪れる人気のスポットとなっています。

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