ピロリン酸テトラエチル

ピロリン酸テトラエチル (TetraEthyl PyroPhosphate, TEPP)

ピロリン酸テトラエチルは、化学式 C8H20O7P2 を持つ有機化合物で、かつて農業において野菜や果樹の害虫を駆除するための殺虫剤として使われていました。しかし、その極めて高い毒性ゆえに、現在では農薬としての使用が制限されており、毒物及び劇物取締法に基づき特定毒物に指定されています。

歴史と用途

この化合物は、1950年に有機リン系農薬の第一号として登録されました。商品名としては「テップ」や「ニッカリン」が知られ、稲のウンカや、果樹、花卉、野菜のアブラムシ、さらには桑のキジラミやヒメハムシの駆除に利用されていました。しかし、その使用は1969年12月31日に終息し、以降は農業用途から排除されています。

特性

ピロリン酸テトラエチルは、水分を吸収する性質を持つ吸湿性化合物であり、環境中で不安定です。水と接触すると加水分解を起こし、加熱することで有毒なPOxガスを生成します。これらの性質は、取り扱いや保管にも注意が必要であることを示しています。

毒性について

この化合物は温血動物に対しても強い毒性を示し、その影響は中枢神経系に及びます。経口摂取や筋肉内摂取によって顕著な毒性が現れ、特に経口投与における急性毒性の指標であるLD50は7 mg/kg（マウスにおいて測定された値）という非常に低い数値です。このことから、ピロリン酸テトラエチルは非常に危険な物質とされています。

関連項目

この物質に関連する重要な出来事としては、名張毒ぶどう酒事件が挙げられます。また、ピロリン酸や有機リン化合物、殺虫剤に関する知識も有用です。特に日本の特定毒物一覧においてもピロリン酸テトラエチルは重要な位置を占めています。

まとめ

ピロリン酸テトラエチルは、その昭和時代における農薬としての利用に加え、現在はその毒性から特定毒物として厳しい規制の下に置かれています。この化合物の取り扱いには十分な注意が必要であり、過去の用途を知ることで、現在の安全な農業や環境保護に寄与することが求められています。

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