ピンスク

ベラルーシの古都ピンスク：歴史と現状

ベラルーシ南西部、ブレスト州に位置するピンスクは、人口約13万人を擁する同国10番目の大都市です。プリピャチ川、ストルメン川、ピナ川の合流点という地理的条件から、古くから水運の要衝として栄え、現在も造船業が盛んな工業都市となっています。しかし、ピンスクの歴史は、豊かな水運の歴史だけでなく、幾多の苦難の歴史も刻み込んでいるのです。

複雑な歴史の舞台

ピンスクの起源は古く、12世紀にはミンスク公国の一部として存在が確認されています。しかし、13世紀にはモンゴル帝国の侵攻を受け、その後は独立した公国の主要都市として発展しました。14世紀にはリトアニア大公国に編入され、1569年のルブリン合同によるポーランド・リトアニア共和国の成立後は、ブレスト県の県庁所在地として繁栄を謳歌します。

しかし、平和な時代ばかりではありませんでした。17世紀半ばには、ウクライナ・コサックの反乱（フメリニツキーの乱）に巻き込まれ、大規模なユダヤ人虐殺（ポグロム）が発生。その後もコサックの襲撃は続き、18世紀初頭にはスウェーデン軍の侵攻と略奪、焼き討ちにも遭いました。幾度もの苦難を経験しながらも、共和国国立印刷所の設立などを契機に経済復興を遂げ、伝統的な造船業や河川運送業は再び活況を呈しました。

ロシア帝国時代と20世紀の悲劇

18世紀末、ロシア帝国によるポーランド分割の結果、ピンスクはロシア領となりました。19世紀には、ロシア帝国政府の政策により、多くのユダヤ人がピンスクに移住し、1897年の国勢調査では、人口の4分の3がユダヤ人であったと言われています。

20世紀に入ると、ピンスクはさらに複雑な歴史の渦中に巻き込まれます。第一次世界大戦後のポーランド・ソビエト戦争では、ポーランド軍によるユダヤ人住民への弾圧、そして第二次世界大戦の勃発です。1939年のソ連によるポーランド侵攻の後、1941年にはナチス・ドイツがピンスクを占領。ユダヤ人ゲットーが設置され、1942年には大規模な虐殺が行われ、約3万人のユダヤ人が命を落としました。

ソ連時代から独立へ

第二次世界大戦後、ピンスクはソ連に編入され、ソ連邦崩壊後の1991年にはベラルーシ共和国の一部となりました。現在も、ピンスクはベラルーシにおいて重要な工業都市として発展を続けていますが、その歴史には、常に影としてユダヤ人虐殺の悲劇がつきまといます。ピンスクの現状は、豊かな歴史と、その影の部分を同時に理解することで見えてきます。

今後の課題

現在、ピンスクはベラルーシの重要な都市として発展を続けていますが、その歴史的背景から、ユダヤ人虐殺の記憶をどのように後世に伝えるか、また、悲劇を繰り返さないために何ができるのか、という課題に直面しています。歴史を正しく理解し、未来へ向かうために、ピンスクの歴史を学ぶことは非常に重要と言えるでしょう。

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