ピース川(Peace River)
ピース川は、
カナダ西部の
ブリティッシュコロンビア州北部山岳地帯に源を発し、
アルバータ州を縦断して流れる大規模な河川です。全長は約1,923
キロメートル、
流域面積はおよそ30万2,500平方
キロメートルに及び、北米大陸でも有数の水量を誇る
マッケンジー川の主要な源流の一つとなっています。
流路
その源流は、
ブリティッシュコロンビア州北部の
ロッキー山脈の厳しい山中に位置します。上流部には、
水力発電を目的として建設された巨大なW・A・C・ベネットダムがあり、このダムによって形成された広大な人造湖がウィリストン湖です。ダムを過ぎた川は、東へと向きを変え、州境を越えて
アルバータ州に入ります。
アルバータ州内では、概ね北東へと流れを下り、最終的にウッドバッファロー国立公園内に広がるピース・アサバスカ・デルタに至ります。このデルタ地帯で、ピース川は南から流れてくる
アサバスカ川と合流します。両河川の合流後、その流れはスレイブ川と名前を変え、さらに下流で
マッケンジー川本流に注ぎ込みます。ピース川と
アサバスカ川によって形成される内陸
三角州であるピース・アサバスカ・デルタは、その豊かな生態系が評価され、1982年には
ラムサール条約の湿地リストに登録されています。
歴史
ピース川流域には、古くから先住民であるダンザー族の人々が暮らしていました。ヨーロッパ人の来訪としては、18世紀後半に
毛皮交易に関わる人々が探検を開始しました。
1785年には
毛皮商人のピーター・ポンドがこの川を訪れたことが記録に残っています。
1788年には、ノースウェスト・カンパニーのシャルル・ボワイエが、ボワイエ川との合流点に最初の交易拠点を築きました。その後も奥地への探求は続き、
1793年には著名な探検家アレグザンダー・マッケンジーが、この川を遡上して大陸
分水界に到達しています。こうした探検活動に伴い、
毛皮交易網は拡大し、
1794年には現在のフォートセントジョーンの近くにロッキーマウンテンハウスという新たな交易地が設立されました。
産業
アルバータ州を流れるピース川の谷一帯は、肥沃な土壌に恵まれており、
19世紀末頃から農業が盛んになりました。特に小麦栽培は地域の重要な産業となっています。また、ピース川流域は、地下資源も豊富です。
石油や
天然ガスの大規模な埋蔵が確認されており、これらのエネルギー資源の生産は、
カナダ経済において大きな役割を果たしています。
主な支流
ピース川には多くの支流がありますが、主なものとしては以下の河川が挙げられます。
フィンレイ川
ハーフウェイ川
パイン川
スモーキー川
カドット川
ワバスカ川
これらの支流が合流することで、ピース川は広大な流域からの水を
マッケンジー川水系へと運んでいます。