ピーター・ブリーカー

ピーター・ブリーカー：東南アジアの魚類研究に生涯を捧げた医師

ピーター・ブリーカー（Pieter Bleeker, 1819年7月10日 - 1878年1月24日）は、オランダの医師であり、同時に著名な魚類学者でもありました。彼は、東アジア、特に現在のインドネシアの広大な地域における魚類研究でその名を広く知られています。

軍医としての活動と魚類研究の始まり

ブリーカーはザーンダムで生まれ、医師としてのキャリアをスタートさせました。1842年から1860年の間、彼はオランダ東インド陸軍の軍医将校としてインドネシアに駐在しました。軍務に従事する傍ら、ブリーカーは現地の魚類の研究に情熱を燃やしました。彼は、地元の漁師たちから標本を収集するだけでなく、各地の島々からも標本が送られてくるような独自のネットワークを構築しました。

驚異的な標本収集と図鑑編纂

彼の熱心な活動により、収集された魚類標本は12,000点を超えました。これらの貴重な標本は、現在ではナチュラリス生物多様性センターに保存されており、研究者にとって重要な資料となっています。1860年にオランダに帰国後、ブリーカーは長年の研究成果をまとめた大著『東インドオランダ領の魚類図鑑』（"Atlas Ichtyologique des Indes Orientales Netherlandaises"）の出版を開始しました。この図鑑は、1862年から彼の没年である1878年までの間に、全36巻に及ぶ大作として刊行され、1500点もの精緻な図版が添えられていました。この図鑑は、ブリーカーの魚類学への貢献を示すだけでなく、当時の魚類研究における図版の重要性を示唆するものでもありました。1977年には、スミソニアン博物館によって再刊され、現代の研究者にも利用されることとなりました。

著書と業績

ブリーカーの主な著書には、以下のものがあります。

1859年: 『Enumeratio specierum piscium hucusque in Archipelago indico observatarum』(インド諸島で観察された魚類種の列挙)。
1862-1878年: 『Atlas Ichtyologique des Indes Orientales Néerlandaises』(東インドオランダ領の魚類図鑑)。スミソニアン協会によって再刊されています。
1874年: 『Typi nonnuli generici piscium neglecti』(見過ごされたいくつかの魚類の属のタイプ)。

彼の業績は、魚類学における分類学の基礎を築き、後世の研究に大きな影響を与えました。彼が収集した標本と図鑑は、東南アジアの魚類相を解明する上で欠かせない貴重な資料となっています。ブリーカーの研究は、単なる分類だけでなく、生物多様性の理解に大きく貢献しています。彼の研究姿勢は、現在でも多くの研究者にとって模範となっています。

参考資料

ブリーカーの研究については、以下の文献に詳しい記述があります。

Theodore W. Pietsch & William D. Anderson (dir.) (1997). Collection building in ichthyology and herpetology. American Society of Ichthyologists and Herpetologists.

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