ファイアフラッシュ (ミサイル)

フェアリー ファイアフラッシュ：イギリス初の空対空ミサイル

フェアリー ファイアフラッシュ（Fairey Fireflash）は、第二次世界大戦終結後にイギリスが初めて開発した空対空誘導ミサイルです。イギリス空軍（RAF）の戦闘機に搭載され、敵機を迎撃することを目的としていましたが、その開発は必ずしも成功とは言えず、実際に部隊に配備されたのはごく少数にとどまりました。

開発の背景と経緯

ファイアフラッシュの開発は、戦後の軍需省から出された空対空誘導ミサイルの要求に応える形で、1949年に始まりました。当初、このプロジェクトには「ピンクホーク」というレインボーコードネームが与えられていましたが、後に「ブルースカイ」へと変更されました。開発はフェアリー・アビエーション社によって進められ、1955年までにおよそ300基のミサイルが製造されました。しかし、この時点でイギリス空軍は、ファイアフラッシュを正式な兵器システムとして採用することに難色を示していました。

特徴的な構造と誘導システム

ファイアフラッシュの誘導方式には、レーダービームライディングが採用されました。これは、発射母機が目標に向けて照射するレーダービームの中心線上をミサイルが飛行するというものです。しかし、このミサイルの最も特異な点は、その推進システムにありました。弾体そのものにはエンジンがなく、胴体の前方、ノーズ付近に斜めに取り付けられた2基の大型固体燃料ロケットブースターによって加速されました。これらのブースターは発射から約1.5秒後に燃焼を終え、ミサイル本体から切り離されます。その後、慣性で目標へと向かうという構造でした。

このような特殊な構造が採用された背景には、ロケットエンジンの噴煙に含まれるイオン化された粒子が、レーダー信号による誘導に悪影響を与えるのではないかという懸念があったためとされています。しかし、エンジンを持たずブースターによる初期加速のみに頼るこの方式は、ミサイルの飛翔距離と持続時間を著しく制限する結果となりました。その後のミサイル開発において、ロケット噴煙の中を通してもビームライディング誘導が可能であることが実証されたこと（例えば、地対空ミサイル「レイピア」システムなど）を考えると、ファイアフラッシュの推進構造は、当時の技術的懸念に基づくものの、結果的に性能上の制約となったと言えます。

試験と運用

1955年から1957年にかけて、ファイアフラッシュはウェールズのRAF Valley基地や、オーストラリア南部のウーメラ試験場で、第6 JSTU（Joint Service Trials Unit）によって広範な試験が実施されました。試験には、初期には第一誘導兵器開発飛行中隊のミーティアNF11試験機が用いられ、後にスーパーマリン スイフト戦闘機も使用されました。

これらの試験を経て、1957年8月に少数がイギリス空軍に採用されました。しかし、この時点での評価は「ピストンエンジン爆撃機に対して限定的な能力しか持たない」というものであり、ジェット機時代の主要な兵器としては不十分と見なされていました。結局、ファイアフラッシュの運用期間は非常に短く、翌年の1958年8月には、より実用的で赤外線誘導方式を採用したデ・ハビランド ファイアストリーク空対空ミサイルの配備が開始され、ファイアフラッシュはその役割を終えました。

まとめ

フェアリー ファイアフラッシュは、イギリスが空対空ミサイル開発という新たな分野に挑戦した初期の試みであり、その特異な構造は当時の技術的課題や懸念を反映したものでした。性能上の限界から成功には至らず、その運用も限定的かつ短期間に終わりましたが、イギリスのミサイル開発史において、後続の高性能ミサイルが生まれるための重要な第一歩として位置づけられる存在です。

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