ウーメラ試験場

ウーメラ試験場

ウーメラ試験場（RAAF Woomera Test Range: RAAF WTR）は、オーストラリア南オーストラリア州の北西部に広がる、極めて大規模な陸上試験施設です。「世界で最も広大な陸上射撃場」として知られており、その物理的な範囲は「ウーメラ立入制限区域（Woomera Prohibited Area; WPA）」とほぼ一致しています。RAAF WTRという名称は、この区域内で試験のために利用される設備や施設全体を含む総称として用いられています。

概要

ウーメラ試験場の広さは、約12万7千平方キロメートルにも及びます。これはヨーロッパの国であるイングランド全土にほぼ匹敵する面積であり、日本の本州（約22万8千平方キロメートル）の半分をわずかに超える広大な領域です。この広大な試験場は、オーストラリア連邦政府によってオーストラリア国防軍の重要な演習場に指定されており、国防省の管理下に置かれています。試験活動を含むRAAF WTR全体の運用管理は、オーストラリア空軍の航空宇宙運用支援グループ（Aerospace Operational Support Group; AOSG）が責任を担っています。

試験活動に必要な各種支援サービスを提供するための主要な拠点として、RAAF WTRの南東端にはウーメラ村とウーメラ飛行場が設置されています。また、実際の試験活動が行われる中心的な場所である「ウーメラ・レンジヘッド」は、ウーメラ村から北西へおよそ40キロメートル離れたクーリミルカ地区に位置しています。

歴史的な利用

ウーメラ試験場は、その歴史の中で様々な重要な軍事及び宇宙開発関連の試験に利用されてきました。

軍事試験: 1953年には、イギリス軍が開発した地対空ミサイルの試験がここで行われています。
宇宙開発:
1967年11月29日には、スパルタロケットにより、オーストラリア初の人工衛星である「WRESAT」がウーメラから打ち上げられました。
1971年10月28日には、イギリス国防省がブラックアローロケットを用いて人工衛星「プロスペロ」を打ち上げました。これにより、イギリスは自力での人工衛星打上能力を持つ世界で6番目の国となりました。

民間および商業利用

ウーメラ試験場は、軍事目的だけでなく、近年は民間や商業的な非軍事目的の試験プログラムにも利用が拡大しています。

日本の宇宙開発との連携:
日本の宇宙開発機関である宇宙開発事業団（NASDA）と航空宇宙技術研究所（NAL）（現在は両機関が統合し宇宙航空研究開発機構、JAXA）は、1996年に小型自動着陸実験機（ALFLEX）の飛行実験をウーメラで実施しました。
NALおよびJAXAは、2002年と2005年にも小型超音速実験機（NEXST-1）の飛行実験をここで行っています。
「はやぶさ」カプセルの帰還地: 特筆すべきは、JAXAの小惑星探査機「はやぶさ」（MUSES-C）が小惑星イトカワから持ち帰ったサンプルカプセルの着地点となったことです。2010年6月13日、このカプセルはウーメラ試験場区域内に無事帰還しました。後継機である「はやぶさ2」のカプセルも、2020年12月6日に同じくウーメラ地区に着地し、貴重なサンプルが回収されました。
* 科学観測拠点: また、ウーメラ試験場は科学観測の拠点としても活用されています。日本の大学も参加するガンマ線天体物理学分野の国際協力実験であるCANGAROO（Collaboration of Australia and Nippon for a GAmma Ray Observatory in the Outback）プロジェクトでは、この場所に大型のガンマ線望遠鏡が設置され、高エネルギー天体の観測が継続して行われています。

ウーメラ試験場は、その広大な規模と多様な設備により、オーストラリア国防における重要な役割を果たすとともに、世界の宇宙開発や科学研究にも貢献するユニークな施設となっています。

もう一度検索