ファイアー・アンド・レイン

「ファイアー・アンド・レイン」（Fire and Rain）は、アメリカのシンガーソングライター、ジェームス・テイラーが1970年に発表した楽曲であり、彼の代表作の一つとして広く知られています。この曲は、ローリング・ストーン誌が選ぶ「オールタイム・グレイテスト・ソング500」（2021年版）において146位にランクインするなど、音楽史においても重要な位置を占めています。

概要

1968年、ジェームス・テイラーがファースト・アルバムのレコーディングをロンドンで行っていた頃、彼の幼馴染であったスザンヌ・シュナーが自殺するという悲劇が起こりました。当時、テイラーはビートルズが設立したアップル・レコードと契約しており、周囲の友人は彼の成功を願うあまり、この悲しい知らせを伝えるのをためらっていました。テイラーがスザンヌの死を知ったのは、実に6ヶ月後のことでした。

この曲の歌詞には、友人の自殺という悲しい出来事に加え、テイラーがかつて参加していたバンド、ザ・フライング・マシーンの崩壊、それに伴う彼の抑うつ状態、そして彼自身の麻薬中毒といった苦悩が反映されています。歌詞の一節「Sweet dreams and Flying Machines in pieces on the ground」は、それらの出来事を象徴的に表現しています。

1969年10月、アメリカに帰国したテイラーはワーナー・ブラザース・レコードと契約を結びます。同年12月、ロサンゼルスのサンセット・サウンドでセカンド・アルバムのレコーディングを開始。ドラムスはラス・カンケル、ピアノはキャロル・キング、ダブル・ベースはボビー・ウェストが担当しました。

「ファイアー・アンド・レイン」は、1970年2月に発売されたアルバム『スウィート・ベイビー・ジェイムス』に収録されました。同年8月にはシングルカットされ、ビルボード・Hot 100で3週連続3位を記録する大ヒットとなりました。また、ビルボード・イージーリスニング・チャートでは7位、1970年の年間チャートでは67位を記録。カナダでは2位を獲得しています。

キャロル・キングは、自身の楽曲「君の友だち」が、「ファイアー・アンド・レイン」で繰り返される「I've seen lonely times when I could not find a friend.（友が見つからず孤独だった時もあった）」という歌詞に対する返歌であると語っています。

1970年10月16日にバンクーバーで行われたチャリティ・コンサートでのライブ音源は、2009年11月発売のアルバム『アムチトカ』に収録されました。また、2007年11月にキャロル・キングとロサンゼルスで行ったコンサートのライブ音源は、2010年5月発売のアルバム『Live at the Troubadour』に収録されています。

パロディ

「ファイアー・アンド・レイン」は、様々なパロディ作品にも使用されています。例えば、1994年2月に放送されたテレビアニメ「ザ・シンプソンズ」のシーズン5のエピソード「ホーマー宇宙へ行く」では、ジェームス・テイラーが本人役で登場し、宇宙飛行士としてスペースシャトルに搭乗したホーマー・シンプソンと、同じく本人役でゲスト出演していたバズ・オルドリン（アポロ11号のパイロット）に向けてこの曲を演奏するシーンがあります。歌詞の「Sweet dreams and flying machines in pieces on the ground」がスペースシャトルの墜落を連想させることから、テイラーが「Sweet dreams and flying machines, flying safely through the air（甘い夢と空飛ぶ機械、空を安全に飛んでいく）」と歌い直すというパロディが展開されました。

また、2015年11月にテイラーが「ザ・レイト・ショー・ウィズ・スティーヴン・コルベア」にゲスト出演した際には、この曲を発表した1970年以降のアメリカの大衆文化を織り込んだ替え歌を披露し、観客を沸かせました。

もう一度検索