ファイナルブロー

ファイナルブロー (FINAL BLOW)

1989年、日本のゲームメーカーであるタイトーがアーケード市場に投入したボクシングゲームです。本作は、タイトーの新たなアーケード基板として後の主要タイトルを支えることになる「F2システム」を採用した第一弾タイトルとして、その歴史の幕開けを飾りました。わずか3ヶ月という短期間で開発されたと伝えられており、その完成度の高さは当時の開発スピードを示す一例とも言えるでしょう。

ゲームシステム

操作は8方向レバーに加えて、弱攻撃、中攻撃、そして相手の攻撃を回避するダッキングの3つのボタンを使用します。シンプルな操作ながら、レバー入力との組み合わせで多彩なパンチを繰り出すことが可能です。ゲームは全4ステージで構成されており、各ステージの対戦相手を打ち破っていくことで進行します。

ゲーム開始時、プレイヤーは5人の個性的なボクサーの中から一人を選択します。登場キャラクターは以下の通りです。

ダイナマイト・ジョー
キング・ジェイソン
キム・ナン
フェルナンド・ゴメス
* デトロイト・キッド

興味深いのは、これら選択可能なキャラクター間に、ゲームシステム上のパワーやスピードといった明確な性能差がほとんど設けられていない点です。そのため、対戦においてはキャラクターの特性に頼るのではなく、プレイヤー自身の技術、つまり操作の正確さや駆け引きの巧みさが勝敗を分ける全てとなります。CPUが操作する対戦相手は、ゲームを進めるにつれて徐々に強くなっていくため、プレイヤーは自身のスキルを磨きながら挑む必要があります。

試合の決着は主にノックアウト（KO）によってつきます。対戦相手をダウンさせ、10カウント以内に立ち上がらせることができなければKO勝ちとなります。プレイヤー側も同様に、ダウン後に10カウント以内に起き上がれないと敗北となります。また、1回の試合中に3回ダウンを奪われる、いわゆるスリーノックダウン制でもゲームオーバーとなります。試合時間が3分を経過した場合、ゲーム内の判定システムによって優劣がつけられ、相手よりも数値が低い場合は時間切れによる敗北となります。

移植と展開

『ファイナルブロー』はアーケード版のリリース後、いくつかのプラットフォームに移植されました。特にセガの家庭用ゲーム機であるメガドライブの海外版、セガジェネシスでは、『'Buster' Douglas Knockout Boxing』というタイトルでリリースされています。このバージョンでは、当時の実在のプロボクサーであるジェームス“バスター”ダグラスがフィーチャーされており、オリジナルの登場キャラクターであるデトロイト・キッドに代わって、バスター・ダグラスがプレイヤーキャラクターとして選択可能となっています。また、FM TOWNSや日本のメガドライブへも移植が行われました。

近年では、タイトーのアーケードタイトルを現代のプラットフォームで楽しめる「アーケードアーカイブス」シリーズの一つとして、PlayStation 4|PlayStation_4やNintendo Switchでも配信されており、手軽に本作をプレイすることが可能になっています。

評価とスタッフ

家庭用移植版、特にメガドライブ版は当時のゲーム雑誌で評価を受けています。『ファミコン通信』のクロスレビューでは40点満点中25点、『メガドライブFAN』の読者投票によるゲーム通信簿では30点満点中14.60点という評価でした。当時のゲーム誌のコメントでは、パンチの種類が豊富でダッキング操作も可能である点を評価する一方で、リング内を上下方向に自由に移動できない操作性を惜しむ声も見られました。

本作の開発には、タイトーの多様な部署から多くのスタッフが携わりました。ソフトウェア、キャラクターデザイン、ハードウェア、筐体デザイン、アート、そしてサウンドと、各分野の専門家が集結しています。特にサウンド面は、タイトーのゲームサウンド開発チームであるZUNTATAが担当し、試合の緊張感を高める音楽や効果音を手がけました。FM TOWNS版の移植開発にも、プログラム、グラフィック、サウンドなど多くのクリエイターが関わっています。

『ファイナルブロー』は、F2システムの記念すべき第一作として、また純粋なプレイヤーの腕が試されるボクシングゲームとして、タイトーのアーケードゲーム史にその名を刻んでいます。そのシンプルながら奥深いゲーム性は、今なお多くのプレイヤーに記憶されていることでしょう。

もう一度検索