ファストタテヤマ

ファストタテヤマ：後方一気の穴馬、その生涯を辿る

ファストタテヤマ(1999年5月30日 - 2012年11月11日)は、日本の競走馬界にその名を刻んだ個性的な存在でした。2歳時からオープン特別競走を主戦場とし、重賞競走でも好成績を残したものの、その競走生活は波乱に満ちたものでした。

2歳時：デイリー杯2歳ステークス制覇

デビューは2001年の札幌開催。初勝利は3戦目という、順調とは言えないスタートでしたが、続くデイリー杯2歳ステークスで、並み居る強豪を相手に鮮やかな差し切り勝ちを収めます。8番人気という低評価を覆す勝利は、関係者を驚かせました。しかし、朝日杯フューチュリティステークスでは13着と大敗、2歳王者への道は閉ざされました。

3歳時：京都新聞杯制覇と菊花賞での惜敗

3歳春は、シンザン記念7着、若葉ステークス2着と結果を残せず、皐月賞では15着と大敗。しかし、続く京都新聞杯では6番人気ながら、見事な差し切り勝ちで重賞2勝目を挙げ、父ダンスインザダークとの親子制覇という快挙を達成しました。ダービー、札幌記念では振るわず、菊花賞に挑みます。

春シーズンや札幌記念での不振、そして16番人気という低評価の中、菊花賞は波乱の幕開けとなりました。スタート直後の1番人気馬落馬というアクシデントの中、後方からレースを進めたファストタテヤマは、最後の直線で驚異的な末脚を見せ、次々と追い抜いていきます。しかし、早々と抜け出したヒシミラクルにはハナ差及ばず2着。ヒシミラクルも人気薄の勝利だったため、馬連・三連複配当はクラシック史上最高額を記録しました。

古馬時代：オープン特別での活躍と重賞での苦戦

古馬となったファストタテヤマは、勝利から遠ざかります。2003年は9戦0勝と不振に陥り、2004年、2005年も勝利からは見放された状態が続きました。2005年の札幌記念では、12番人気ながら2着に食い込み、三連単配当275万円超の大波乱を演出。スランプ脱出かと思われましたが、その後は安定した成績を残すことができませんでした。この頃から主戦騎手は安田康彦から武幸四郎へと交代しています。

2006年には3年半ぶりの勝利を挙げ、その後もオープン特別で3勝を挙げるなど、地道な活躍を続けました。しかし、重賞での勝利は掴めず、輸送競馬や左回りコースが苦手なことも成績に影響を与えていたようです。北海道の競馬場では好成績を残し、特に札幌記念では何度も好走しています。

最後の勝利と引退

最後の勝利は2007年の大阪-ハンブルクカップ。6番人気という人気薄での優勝でした。その後は、京都大賞典6着を最後に競走馬を引退しました。条件戦を経験することなく、常にオープンクラスで競走生活を送ったファストタテヤマ。通算6勝(重賞2勝)、オープン特別3勝という成績は、その類まれな能力と個性を感じさせます。

引退後

引退後は乗馬となり、馬術競技馬として活躍しました。馬名は「ケイローン」、「覇王」と変更されながら、競技馬として新たな人生を歩みました。しかし、2012年11月11日、腸捻転のため13歳でその生涯を終えました。

ファストタテヤマは、重賞勝ちという輝かしい実績を残しただけでなく、多くの競馬ファンに感動と興奮を与え続けた、記憶に残る競走馬でした。その後方からの鋭い追い込みは、今も多くの人の脳裏に焼き付いていることでしょう。彼の競走生活は、華々しい勝利だけでなく、惜敗や苦悩も織り交ぜたドラマチックなものでした。まさに、穴馬として人気を博した彼の競走人生そのものであったと言えるでしょう。

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