ファセル

ファセル（Facel）について

ファセル（Facel）は、かつてフランスに存在した高級車メーカーであり、1940年代から60年代にかけて多くの名車を生み出しました。その製品は、自動車だけでなく、自動車の内装や工作機械、さらには家具にも及んでいました。ここでは、ファセルの歴史や主なモデルについて詳しく見ていきます。

設立と初期の活動

ファセルは1939年、実業家ジャン・ダニノス（Jean Clément Daninos）によって設立されました。当初は工作機械や家具製造を行う企業としてスタートしましたが、第二次世界大戦の勃発により、一時的に活動を停止。戦後、ファセルは金属加工技術を活かし、自動車ボディの生産を行うようになり、主にパナールをはじめとした自動車メーカーからの請負仕事を受け持っていました。しかし、パナールが新たなモデルへの移行を決定した際、ファセルの最大の収入源が失われる運命にありました。

ファセル・ヴェガの誕生

1940年代後半、ファセルは高級車市場の復興を目指し、1954年から自社ブランドの高級車「ファセル・ヴェガ」の生産を開始します。戦後のフランスでは、多くの名門高級車が消滅し、ファセルはその流れに逆らう形で新たなブランドを立ち上げました。ファセル・ヴェガは、その豪華なスタイリングと贅沢な内装で瞬く間に注目を集めました。

アメリカ市場への進出

ファセル・ヴェガは、特に1950年代においてアメリカ市場を念頭に置いて製造されました。ボディは大胆で、アメリカ車風のデザインが採用され、クライスラー製の強力なV8エンジンを搭載していました。特徴的なデザインは、大きなラジエーターグリルやデュアルヘッドライトが組み合わさったもので、多くの富裕層に愛されました。キャッチコピー「最高級を知る、ごく少数のために（For the Few Who Own the Finest）」は、そのエクスクルーシビティを強調しました。

ヴェガからファセリアへ

ファセルはさらに小型高級クーペ「ファセル・ヴェガ・ファセリア」の開発に着手し、1960年に完成させます。しかし、その設計はあまりにも先進的すぎたため、エンジンに深刻なトラブルが発生し、ファセルの信用を損なう結果となります。最初の試みは失敗に終わりましたが、その後ファセリアにはボルボやBMCのエンジンが搭載されました。

倒産と影響

1964年にファセルは倒産しました。市場の変化や大排気量車の人気が低下したことが影響を及ぼし、経営難に追い込まれました。ファセル・ヴェガは現在でもコレクターズアイテムとして高い評価を受けており、オークションやコンクール・デレガンスなどで見ることができます。ファセルの大型モデルは日本でもわずかに輸入された歴史があります。

著名人との関わり

ファセル・ヴェガは、レーシングドライバーや画家、俳優など多くの著名人に愛用されました。特にパブロ・ピカソやトニー・カーティス、エヴァ・ガードナーといった面々に乗られ、高級車文化の象徴となりました。また、作家のアルベール・カミュがファセル・ヴェガでの事故で命を落としたことも、ブランドの歴史の一部として記憶されています。

まとめ

ファセルはフランス製高級車の美しさと芸術性を体現したメーカーでした。多くの名作を残し、今日でもその影響を感じることができる存在として、多くの人々に愛されています。

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