ファビオラ・デ・モラ・イ・アラゴン

ファビオラ・デ・モラ・イ・アラゴン：ベルギー王妃の生涯

ファビオラ・デ・モラ・イ・アラゴン（1928年6月11日 - 2014年12月5日）は、ベルギー国王ボードゥアン1世の王妃として知られています。彼女はスペインの名門貴族の家に生まれ、その生涯は、深い信仰心と慈善活動に彩られていました。

生い立ちと結婚

ファビオラは、スペインの第4代カーサ・リエラ侯爵ゴンサーロ・デ・モラとブランカ・デ・アラゴンの三女として、スペインのマドリードで誕生しました。洗礼時の代母はスペイン王妃ビクトリア・エウヘニアが務め、洗礼名には「ファビオラ・フェルナンダ・マリア・デ・ラス・ビクトリアス・アントニア・アデライダ」という長い名前が与えられました。結婚前は児童文学者として活動し、本を出版していたという一面も持っています。

1960年12月15日、ファビオラはベルギー国王ボードゥアン1世と結婚しました。結婚式では、ボードゥアン1世の母であるアストリッド王妃が結婚の際に身につけたアールデコのティアラと、バレンシアガがデザインしたウェディングドレスを着用し、その美しさはアメリカの『タイム』誌に「シンデレラ・ガール」と称されました。この結婚は世界中の注目を集めましたが、その後、ファビオラは数回の妊娠を経験したものの、すべて流産に終わり、子供を授かることはありませんでした。

敬虔なカトリック教徒としての活動

ファビオラは敬虔なカトリック教徒として知られ、途上国の女性や子供たちの福祉活動に情熱を注ぎました。夫であるボードゥアン1世との間には子供はいませんでしたが、彼女は慈善活動を通じて多くの人々に希望を与え続けました。1993年にボードゥアン1世が亡くなると、ファビオラはカトリック国の王妃にのみ許される白装束（白い喪服、白い帽子、白い靴）を着用し、国民の悲しみを誘いました。白は故人への感謝と復活を願う色とされており、彼女の喪服は深い印象を与えました。この白装束が、1996年にブリュッセルで起こった市民による大規模な警察抗議デモ「白の行進」のシンボルカラーとして使われることにもつながりました。

また、2006年には、教皇ベネディクト16世の一般謁見にも出席しています。

ボードゥアン1世基金と晩年

ファビオラはボードゥアン1世基金の名誉総裁を務め、夫の遺志を継いで活動を続けました。しかし、2013年には、この基金が遺産相続税の支払い回避のために創設されたという疑惑が浮上し、ベルギー国内の各政党から批判を受けました。この疑惑は、義弟であるアルベール2世の退位と甥のフィリップへの王位継承の背景にも影響を与えたとされています。

2014年12月5日、ファビオラはブリュッセルで息を引き取りました。86歳でした。彼女の死はベルギー国民にとって大きな悲しみであり、その生涯は多くの人々の記憶に深く刻まれました。

その他のエピソード

日本の皇室との交流も深く、上皇后美智子様とは皇太子妃時代から親交がありました。ファビオラの葬儀には美智子様も参列し、その弔意を示されました。また、南極大陸のやまと山脈には、「クイーン・ファビオラ山脈」という彼女の名を冠した山脈も存在しています。これは彼女が多くの人々に愛され、その功績が称えられた証といえるでしょう。

ファビオラ・デ・モラ・イ・アラゴンは、ベルギー王妃として、また一人の人間として、多くの人々に影響を与え、愛された女性でした。

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