ファラオ・ハウンド

ファラオ・ハウンド：古代エジプトの血を受け継ぐ優雅な猟犬

ファラオ・ハウンドは、マルタ共和国原産の希少な犬種です。その歴史は古く、紀元前1000年頃にフェニキア人によってマルタ島に持ち込まれたエジプト原産の犬を祖先としています。島という隔絶された環境で、長い年月をかけて純血を保ち、独自の進化を遂げました。

歴史：古代から続く血統と愛称

ファラオ・ハウンドの祖先であるエジプト原産の犬は、ウサギ狩りに用いられていました。この伝統はマルタ島でも受け継がれ、ファラオ・ハウンドも古くからウサギ猟犬として活躍しました。そのため、マルタ語で「ウサギ猟犬」を意味する「ケルブ・タル・フェネック」という名前で呼ばれていました。

1960年代、イギリスへの輸出が始まると、その高貴な容姿から「ファラオ・ハウンド」と改名されました。「ファラオ」はツタンカーメンなどの古代エジプトの支配者を指し、その高貴な印象とエジプト原産であることを反映しています。改名後、ファラオ・ハウンドは人気を博し、世界中に広まりました。1920年にはマルタ共和国の国犬に指定され、現在もその人気は衰えることを知りません。

特徴：優美な容姿と穏やかな性格

ファラオ・ハウンドは、その祖先である古代エジプトの犬、アヌビス神を思わせる凛とした容姿が特徴です。琥珀色の瞳が印象的で、長いマズル、首、脚、胴体、そしてサーベル型の垂れ尾を持ちます。耳はろうそくのような形をしています。筋肉質で引き締まった体躯は、優れた身体能力を物語っています。毛色はレッド系単色や、ホワイトのパッチが入ったものが一般的です。スムースコートで、暑さには強い一方、寒さには弱い体質です。

体高は雄で58～64cm、雌で53～61cm、体重は雌雄共に18～25kgの中型犬です。外見からは想像できないほど、性格は人懐っこく、温和で従順です。しかし、初対面の人や犬には警戒心を抱くこともあります。家族や信頼できる相手には非常に友好的で、子供にも寛容です。しつけの飲み込みも良く、状況判断力も高いですが、自立心が強いため、根気強いしつけが必要です。

ウサギ猟犬としての本能が残っているため、小型の動物を見ると狩猟本能が刺激されることがあります。そのため、小型動物との接触は避けるべきです。運動量は非常に多く、活発な犬種ですが、適切な運動と訓練を行うことで、家庭犬としても優れた適性を持っています。また、水に濡れても独特の犬臭がほとんどしません。

飼育：運動量と社会化が重要

ファラオ・ハウンドは、運動量の多い犬種です。毎日の散歩や運動は必須です。十分な運動をしないと、ストレスが溜まり、問題行動につながる可能性があります。また、幼少期からの適切な社会化も重要です。様々な環境や人、犬に慣れさせることで、大人になってからも穏やかで友好的な性格を保つことができます。

さらに、寒さには弱いため、冬場は寒さ対策が必要です。寒すぎると健康を損なう可能性があります。適切な環境とケアを行い、ファラオ・ハウンドの優雅で穏やかな魅力を長く楽しむことができます。

参考文献

『犬のカタログ2004』（学研）中島眞理 監督･写真
『日本と世界の愛犬図鑑2007』（辰巳出版）佐草一優監修
『デズモンド・モリスの犬種事典』デズモンド・モリス著書、福山英也、大木卓訳 誠文堂新光社、2007年
『日本と世界の愛犬図鑑2009』（辰巳出版）藤原尚太郎編･著
『日本と世界の愛犬図鑑2010』（辰巳出版）藤原尚太郎編･著

関連項目

犬の品種一覧
チルネコ・デル・エトナ
イビザン・ハウンド
マルチーズ
フェネック

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