ファルネーゼのアトラス

ファルネーゼのアトラス

『ファルネーゼのアトラス』（原題: Atlante Farnese）は、紀元150年頃に創作された大理石の彫刻です。この作品は現在、イタリアのナポリ国立考古学博物館で保管されており、古代ローマ時代を代表する文化遺産として広く知られています。ファルネーゼ家がルネサンス期に収集した貴重なコレクションの一つであり、ギリシャ神話の巨神であるアトラスを題材としています。

制作背景と特徴

ファルネーゼのアトラスは、おそらくアントニヌス朝時代に制作され、作者は不明です。この作品は古代ギリシャの彫刻のローマン・コピーに相当し、現在のところ、世界に存在する唯一のオリジナルです。高さは約2メートル、重さが約2トンもあるこの彫刻は、非常に重厚感があります。アトラスはマントを身にまとい、膝を曲げて体を屈めながら両手で天球を支える姿が描かれています。この姿勢は、アトラスが重責を負っていることを象徴しており、力強さとともに神秘的な雰囲気を醸し出しています。

アトラスが支える天球には、古代の天文学者プトレマイオスの理論に基づいた星座や黄道十二宮、子午線など、精緻な浮彫が施されています。なお、この天球は16世紀のオランダで製作された天球儀のモデルにもなっており、その影響は大きいです。

所蔵と歴史

この彫刻は1562年に、アレッサンドロ・ファルネーゼによって入手されました。その後、『美しい尻のヴィーナス』や『ファルネーゼのヘラクレス』などとともに「ファルネーゼ・コレクション」の一部となりました。コレクションはローマのファルネーゼ宮殿の「アトラスの間」に設置されていましたが、1786年にブルボン家の管理下でナポリに移され、現在の博物館に所蔵されています。

日本との関わり

ファルネーゼのアトラスは、2025年の大阪・関西万博において、イタリアパビリオンの主要な展示品として空輸される予定です。この展示は日本及びアジアでの初公開となり、万博の見どころの一つとして多くのメディアで注目されています。他のパビリオンがAIや映像を強調する中、イタリアはこの作品や古典的な絵画などの実物を展示することに強いこだわりを持っています。これによって、古代からの文化遺産を直接体験できる機会が提供され、多くの来場者の期待を集めています。

関連項目

この作品に関連する主なテーマとして、以下が挙げられます：古代ギリシアの彫刻、ローマ美術、天文学史、天球儀（恒星）、トレミーの48星座などです。それぞれのテーマは、ファルネーゼのアトラスを理解する上で重要な要素となっています。

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