ファントム/開戦前夜

映画『ファントム/開戦前夜』(Phantom)

概要

『ファントム/開戦前夜』は、2013年にアメリカ合衆国で製作された戦争映画です。トッド・ロビンソンが監督を務め、エド・ハリス、デイヴィッド・ドゥカヴニーらが出演しています。本作は、東西冷戦下の1968年に発生したソ連の弾道ミサイル潜水艦「K-129」の沈没事故を題材とし、その裏に隠された秘密と、閉鎖空間での人間ドラマを描いた作品です。

題材と物語

映画のインスピレーションとなったのは、1968年、ソ連の弾道ミサイル潜水艦K-129が、通常の作戦海域を大きく離れたハワイ近海で謎の沈没を遂げた実際の事件です。本作はこの史実を基にしつつ、フィクションとして、その潜水艦が秘密兵器「ファントム」を搭載し、ある極秘任務を帯びていたという設定で物語を展開します。

主人公は、退役を控えたベテラン潜水艦長デミトリー（デミ）・ズボフ（エド・ハリス）。彼は過去の事故のトラウマを抱えながらも、新たな任務のため古い潜水艦で出航します。艦には、KGBから秘密兵器「ファントム」の監視役として急進派のブルニー（デイヴィッド・ドゥカヴニー）が乗り込んでおり、デミ艦長とブルニーの間で任務の目的や遂行方法を巡る激しい対立が勃発します。極限状況下で、デミは自身の信念と乗組員の命、そして世界を巻き込みかねない事態への対応を迫られます。

主な登場人物

本作には、冷戦下の潜水艦という閉鎖的な環境で、それぞれの立場と思惑が交錯する多様な人物が登場します。

デミトリー（デミ）・ズボフ: エド・ハリス（日本語吹替: 玉野井直樹）
潜水艦長。経験豊富だが、過去の出来事に苦しんでいる。
ブルニー: デイヴィッド・ドゥカヴニー（日本語吹替: 小杉十郎太）
KGBのエージェント。秘密兵器の監視役であり、任務のためなら非情な手段も辞さない。
アレックス・コズロフ: ウィリアム・フィクナー（日本語吹替: 浦山迅）
潜水艦副長。デミ艦長を深く信頼し、支える。
マルコフ: ランス・ヘンリクセン（日本語吹替: 浦山迅）
司令官。デミに任務を与える。
パヴロフ: ジョナサン・シェック（日本語吹替: 金尾哲夫）
政治将校。デミの友人でもあるが、体制側の人間として振る舞う。
その他:
セマク軍医: ジェイソン・ベギー（日本語吹替: 中根徹）
ソフィ（デミの妻）: ダグマーラ・ドミンスク（日本語吹替: 合田絵利）
ティルトフ（技師）: ショーン・パトリック・フラナリー（日本語吹替: 麻生智久）
サーシャ（若い士官）: ジェイソン・グレイ＝スタンフォード（日本語吹替: 増元拓也）
* ソナー技師: ジョーダン・ブリッジス

批評家の評価

『ファントム/開戦前夜』に対する批評家の評価は、全体的に厳しいものでした。映画批評集積サイトRotten Tomatoesでは、56件のレビューの中で好意的な評価は25%に留まり、平均点は4.7/10です。批評家たちの総意としては、「エド・ハリスのような確かな演技力を持つキャストたちは最善を尽くしているものの、脚本があまりに拙く、作品に緊張感をもたらすことができていない。そのため、同ジャンルの優れた先行作品と並べることはできない」と述べられています。

また、別の批評集積サイトMetacriticでは、22件のレビューに基づく平均スコアは40/100でした。これは、好評価が2件、賛否混在が14件、低評価が6件という内訳でした。これらの評価は、俳優陣の演技は一定の評価を得ているものの、物語構成や展開といった脚本面の弱さが作品全体の評価を押し下げたことを示唆しています。作品としては、批評家からは厳しい意見が多かったと言えます。

まとめ

実話をベースにした潜水艦サスペンスとして興味を引く題材ですが、批評家の評価は辛口でした。キャストの演技など見どころはあり、冷戦下の潜水艦という閉鎖空間での心理劇に興味があれば楽しめる可能性もあります。

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