ファヴェーラ

ファヴェーラとは

ファヴェーラ（またはファベーラ）は、ブラジルに存在するスラム街や貧民地区のことを指します。特にリオデジャネイロに見られるファヴェーラは非常に有名で、実際にカリオカの約4人に1人がこの地域に住んでいます。ファヴェーラには、公有地や所有権が不明な土地に不法に建設された小屋や家屋が密集しています。そのため、ブラジルの州政府や地方自治体は法的にファヴェーラの存在を認めていないのが現状です。

ファヴェーラにはさまざまな形態の建物があります。コンクリートやレンガで作られたものから廃材で作られたものまで多岐にわたり、一般に非常に狭いスペースに密集しています。また、道幅が狭く自動車が通れないことが多いのも特徴です。これにより、住環境は過酷で衛生状態も劣悪です。多くのファヴェーラでは下水処理が不十分で、路上にゴミが散乱しています。時折、電気が通る家もありますが、多くは近隣の電線からの盗電によるものです。さらに、ファヴェーラは都市周辺の山の斜面に位置することが多いため、大雨が降ると地滑りが発生する危険性も孕んでいます。

歴史的背景

ファヴェーラという言葉は、ブラジル北東部の植物「Cnidoscolus quercifolius」に由来しています。1895年から1896年にかけて、北東部のバイーア州で反乱軍が起こり、その後、リオデジャネイロに移住した元兵士たちがモーホ・ダ・プロヴィデンシアの丘に住まいを構えました。この新しい地区は、勝利の地に生い茂っていた植物の名前をとり、モーホ・ダ・ファヴェーラと名付けられます。

その後、ファヴェーラには奴隷から解放された黒人や様々な人種の移民が流入し、地域の人口構成に変化が見られました。1910年代から1940年代にかけて、ファヴェーラの人口が急増すると同時に、貧困層の住宅問題も深刻化していきました。戦後、都市化が進む中でさらに多くの人々がファヴェーラに住むようになります。特に1970年代には、地方からの労働者たちが都会に流入し、ファヴェーラは急速に拡大しました。

現在の状況

ファヴェーラの人口は今も増加し続けており、ブラジル国内の貧困問題を反映しています。近年のデータによれば、ファヴェーラに住む人口の増加率は、一般的な都市部に比べて急速であり、21世紀に入ってからはその傾向に拍車がかかっています。多くの場合、ファヴェーラに住む人々は低賃金の仕事に就いていますが、失業の増加や暴力団同士の抗争といった社会問題が深刻です。

ファヴェーラの住民は、経済格差の厳しい現実と向き合いながら生きており、違法な麻薬取引も広がりを見せています。特に麻薬の取引は、地域の治安を脅かし、ギャング同士の対立や市街戦が日常的に起こっています。これにより、住民は自らの安全を確保するために、時には密売組織との関係を維持せざるを得ない状況に置かれています。

ファヴェーラ対策

ブラジル政府は、ファヴェーラの状況を改善するためのさまざまな計画を導入していますが、成功を収めているとは言い難いです。特に、ファヴェーラ撤去計画が実施されるも、新たなファヴェーラが生まれる結果となっていることが多いです。一方で、最近では「Favela Bairro」計画などが進められ、ファヴェーラにおける生活条件を改善し、住民が安定した生活を送れるような取り組みも少しずつ行われています。

また、リオデジャネイロでの治安維持対策として、特殊部隊がファヴェーラに駐留し、犯罪組織を抑制する努力が続けられています。しかし、銃撃事件や暴力行為は今なお続いており、現地の治安は改善の兆しを見せていません。

ファヴェーラは、ブラジルの社会経済的な困難を象徴する地域であり、その未来は多くの課題を抱えています。

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