フィアット・テムプラ

フィアット・テムプラ：イタリアが生んだ多様なセダン

フィアット・テムプラは、1990年代にフィアット社が製造・販売した乗用車で、同社のレガータの後継車種として登場しました。セダン、ステーションワゴンといった標準的なボディタイプに加え、ブラジル市場ではスポーティな2ドアクーペもラインナップされていました。

テムプラの開発は、フィアット・ティーポと共通の「ティーポ2/3」プロジェクトに基づいており、ランチア・デドラやアルファロメオ・155といった名車とプラットフォームを共有する姉妹車関係にあります。このプロジェクトは、複数ブランドにわたる車種開発コストの削減と、技術・部品の共通化による効率化を目的としていました。

パワートレインは、幅広い選択肢が用意されていました。ガソリンエンジンは、1.4リットルと1.6リットルの4気筒SOHC、そしてより高性能な1.8リットルと2.0リットルの4気筒DOHCがラインナップ。一方、ディーゼルエンジンは1.9リットルと2.0リットルの4気筒DOHCターボ、自然吸気モデルが用意され、ユーザーのニーズに合わせた選択が可能でした。これらのエンジンは全て前輪駆動（FF）方式で駆動力を路面に伝達しました。

シャシーは、フロントにマクファーソンストラット式サスペンション、リアにセミトレーリングアーム式サスペンションを採用。前後ともにコイルスプリングが組み合わさり、快適な乗り心地と安定した走行性能を実現していました。

デザイン面では、イタリアのデザイン会社I.DE.Aが担当したエクステリアは、洗練されたスタイルを特徴としていました。ボディタイプごとに異なる魅力を表現しながらも、フィアットブランドとしての統一感も維持しています。一方、インテリアデザインはフィアット社内のデザインセンターであるフィアットチェントロスティーレが担当し、機能性とデザイン性の両立を図っていました。

生産はイタリアとブラジルで行われ、イタリアでの生産は1997年、ブラジルでは1998年に終了しました。後継車種としては、1996年に登場したフィアット・マレアが引き継ぎました。

日本市場においては、フィアット＆アルファロメオ・モータース・ジャパンが1992年から1993年にかけて、セダン2.0i.e.SXを輸入販売しました。日本仕様のテムプラは、2.0リットル4気筒DOHCガソリンエンジンを搭載し、最高出力110PS、最大トルク16.2kg・mを発生。4速ATが組み合わさり、スムーズな加速と運転のしやすさを提供していました。しかし、販売期間は比較的短期間に終わっており、日本市場での成功は限定的だったと言えるでしょう。

テムプラは、多様なエンジンバリエーションとボディタイプ、そして姉妹車との技術的なつながりを持つ、フィアットの歴史の中でも重要な位置を占めるモデルと言えるでしょう。そのデザインや走行性能、そして比較的幅広い選択肢からなるエンジンラインナップは、当時のユーザーに多様な選択肢を提供しました。しかし、日本市場では限定的な販売に留まった点は、その後のフィアットの日本市場における戦略を考える上で興味深い点と言えるでしょう。

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