フィアット・ムルティプラ

フィアット・ムルティプラについて

フィアット・ムルティプラ（Multipla）は、イタリアの自動車メーカーであるフィアットが製造したユニークなデザインの車両です。生産が始まったのは1998年で、その斬新かつ奇抜な外観デザインが多くの注目を集めました。ムルティプラの最も特徴的なポイントは、ヘッドランプの配置にあります。ロービーム用のヘッドランプは一般的な車両と同様にフロントに配置される一方で、ハイビーム用のランプはAピラーの根本近くに設けられた段差の中にあり、特異なルックスを生み出しています。

ムルティプラの駆動方式は前輪駆動で、車両の内部は2列配置のシートが特徴で、最大6人が乗車できるようになっています。この配置により、すべてのシートが独立しており、個々に折りたたむことができるため、必要に応じて後部座席を取り外すことで、足りない荷室スペースを補うことも可能です。特に欧州では、カーフェリーの料金設定が全長4mを基準に大きく変わるため、フィアットは全長を3,995mmに抑えることで選ぶ理由を提供しました。

また、ムルティプラを基にした特別仕様のスパイダーも生産されており、フィアットの名誉会長であったジャンニ・アニェッリの要望によるワンオフモデルとして存在します。2004年にはマイナーチェンジが実施され、前年にフェイスリフトを受けたプントと似たスタイルへと刷新されましたが、その際に全長が4mを超えてしまい、販売上の利点を失う結果となりました。

ムルティプラは2020年に公開された日本映画『AI崩壊』にも登場しました。この映画では前期型が破壊されるシーンがあり、観客にその存在を印象付けました。

ムルティプラへの評価

ムルティプラの個性的なデザインは、良し悪しの両方の評価を受けました。特にイギリスのコラムニストによって「世界で最も醜い車」と評され、「この車に乗っている限り、外観を気にする必要がない」といった皮肉混じりのコメントも残されました。また、2008年には英デイリー・テレグラフが選ぶ「史上最も醜い車100選」で、ポンティアック・アズテックに次いで2位に選出されるなど、その評価は厳しいものでした。

ただし、問題はデザインだけにとどまりませんでした。ムルティプラには1.6Lのエンジンが搭載されていましたが、オートマチックトランスミッション（AT）との組み合わせでは車重が重く、その非力さが際立つことが指摘されました。そのため、AT車は全モデルで設定されていないため、運転性能においても制約があったのです。さらに、コンパクトな全長に対して幅が広すぎる（1870mm）という点も、ユーザーからの指摘が集まりました。欧州向けには1.9Lのディーゼルエンジンの選択肢もありましたが、日本市場では1.6Lガソリンエンジンのみの設定となっていました。

車名の由来

ムルティプラという名前は、イタリア語で「多様な」を意味する

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