1972年、
フィアットは
DOHCエンジンを搭載した4ドア
セダン、132を発表しました。これは、スポーティな走りで人気を博した125の後継モデルとして期待された一台でした。125と同様、4ドア
セダンのみのボディタイプでしたが、車体の大型化やデザインの変更により、上級モデルの130や、同時期にデビューしたBMW 5シリーズ(初代)にも似た風格を纏っていました。
標準モデルには、125から受け継いだ1,592cc、98馬力の
DOHCエンジンが搭載されました。一方、上級グレードには124スパイダーと同じ1,756cc、111馬力の
DOHCエンジンが搭載され、よりパワフルな走りを実現していました。しかし、この大型化は操縦性に悪影響を及ぼしました。125の軽快なハンドリングとは異なり、132は鈍重なステアリングフィールとアンダーステアリング傾向が強く、スポーティな走りを期待するユーザーを失望させたのです。
1976年にはマイナーチェンジが行われ、GLとGLSの2グレード体制となりました。フロントグリルやサイドモールが変更されたほか、操縦性の改善も図られました。しかし、これらの改良は人気低迷を食い止めるには至らず、132は販売面で苦戦を強いられました。
翌
1977年には、さらなるマイナーチェンジを実施。インテリアデザインを一新し、大型バンパーを採用しました。また、エンジンラインナップにも変更が加えられ、1,800ccエンジンに代わって1,995ccエンジン(112馬力と燃料噴射付き122馬力の2種類)が搭載されました。これは、130の生産終了に伴い、132が
フィアットの最上級モデルとなったことと関係があります。
イタリアでは、運転手付きで利用されるケースも多く、防弾仕様のモデルも存在したようです。
1978年には、2,435ccのディーゼルエンジンモデルも追加されました。
フィアット132は
イタリア国外でも生産されました。
スペインの
セアトでは132として
1973年から1982年まで生産され、
ポーランドでは現地組立により「ポルスキー・
フィアット132P」として生産され、警護車両として広く使用されました。
マレーシアや韓国の起亜産業でもライセンス生産されました。しかし、125や131と比較すると人気は低く、海外生産台数はそれほど多くありませんでした。
フィアット132は、
DOHCエンジン搭載のスポーティな
セダンとしてデビューしながら、大型化による操縦性の悪さや、競合車の台頭により、市場での成功を収めることができませんでした。しかし、最上級モデルとしての役割を担い、防弾仕様などの特殊モデルも存在したことは、その存在感を示しています。132の栄光と影は、時代の変化と
自動車業界の競争の激しさを感じさせる事例と言えるでしょう。