フィリップ・ユリウス (ポメラニア公)

フィリップ・ユリウス：ポメラニア＝ヴォルガスト公の生涯

フィリップ・ユリウス（1584年12月27日 - 1625年2月6日）は、ポメラニア＝ヴォルガスト公として、1592年から1625年までその地を統治しました。彼の生涯は、経済的な苦難、近隣諸国との複雑な関係、そして三十年戦争の影に覆われた時代でした。

生い立ちと教育

フィリップ・ユリウスは、ポメラニア公エルンスト・ルートヴィヒと、ブラウンシュヴァイク＝ヴォルフェンビュッテル公ユリウスの娘ゾフィア・ヘートヴィヒの間に生まれました。1592年に父が亡くなると、叔父であるボギスラフ13世の後見のもとで育ちました。ライプツィヒ大学で教育を受けた後、ヨーロッパ各地の宮廷を訪問し、見識を広めました。

1604年、ブランデンブルク選帝侯ヨハン・ゲオルクの娘アグネス・フォン・ブランデンブルクと結婚。同年、成人を迎えるとポメラニア公位に就きました。しかし、その後も諸国を巡る旅を続け、領地を不在にすることが多かったようです。

経済危機と政策

フィリップ・ユリウスの治世は、深刻な財政難との闘いでした。彼は自身の浪費を抑えることなく、宮廷職員の旅行を制限しました。公領の多くは第三者に貸し出され、農民の状況は悪化の一途をたどりました。農民に課せられた強制労働は増加し、リューゲン島の農民は困窮しました。また、ハンザ同盟都市であるグライフスヴァルトとシュトラールズントに借金の一部を負担させようとしたため、都市との間には激しい対立が生じました。

彼はインフレを抑制しようと試みましたが、効果は限定的であり、オーバーザクセン・クライスとの軋轢を引き起こしました。神聖ローマ皇帝マティアスは、1616年にフランツブルク造幣局の鋳造政策に介入しましたが、誤ってポメラニア＝シュチェチン公フィリップ2世と連絡を取りました。

1622年、フィリップ・ユリウスはデンマーク王クリスチャン4世の招待で、ニーダーザクセン・クライスの議会に参加し、財政戦略を協議しました。ハンブルク条約が締結されましたが、オーバーザクセン・クライスの圧力により、元の状態に戻されました。1623年から1625年にかけて、リューゲン島をデンマーク王に売却する交渉も行われましたが、ボギスラフ14世の反対により失敗に終わりました。

オーバーザクセン・クライス内の対立

晩年は、ザクセン選帝侯領の覇権主義と三十年戦争の激化により、政治的な危機に直面しました。オーバーザクセン・クライス内での政治的独立を維持するための苦闘が続きました。1620年、ザクセン選帝侯ヨハン・ゲオルク1世は、クライスの代表者をライプツィヒに集めましたが、ザクセン選帝侯領の影響力が強く、高額な寄付を求められました。ポメラニアの代表団はこれを拒否し、ザクセン選帝侯との対立が深まりました。

1622年には、ポメラニアとブランデンブルクの代表団が会合を開き、ザクセン選帝侯に対抗するための同盟を模索しましたが、実現には至りませんでした。1623年、ブランデンブルクとザクセンは同盟を結び、挙兵を決定しましたが、ポメラニア軍はブランデンブルク軍の命令に従うことを拒否しました。1624年、ザクセンに率いられたクライス南部は皇帝側に立ちましたが、フィリップ・ユリウスとボギスラフ14世も皇帝との合意に前向きでした。

死と遺産

フィリップ・ユリウスは、帝国軍がオーバーザクセン・クライスの一部を占領する数ヶ月前の1625年2月6日に亡くなりました。彼の死により、ポメラニア＝ヴォルガスト家は断絶し、領地はボギスラフ14世の手に渡りました。しかし、ボギスラフ14世も後継者を残さずに亡くなったため、ポメラニア家は断絶しました。

フィリップ・ユリウスは文化的な面では、グライフスヴァルト大学にガウンを寄贈したり、宮廷で演劇や音楽を奨励したりしました。リューゲン島のグロスハーゲン村は、彼にちなんで「フィリップスハーゲン」と改名されました。

フィリップ・ユリウスの生涯は、17世紀初頭のポメラニアにおける政治的、経済的な苦難を象徴しています。彼の統治は、三十年戦争の影に覆われ、領土の荒廃と王朝の終焉という悲劇的な結末を迎えました。

もう一度検索