ザクセン選帝侯領

ザクセン選帝侯領

ザクセン選帝侯領（Kurfürstentum Sachsen）は、中世から近代にかけて存在した神聖ローマ帝国の重要な領邦国家です。その成立は1356年に遡り、ローマ皇帝カール4世がザクセン＝ヴィッテンベルク公爵を選帝侯に任命したことによります。この結果、ザクセン＝ヴィッテンベルクは小規模な領土ながらも、政治的な影響力を持つ特権を得ました。1806年に分立したザクセン選帝侯領はザクセン王国に取って代わります。

形成期

中世のザクセン公国が崩壊した後、アルブレヒト熊伯の息子ベルンハルト3世によって新たな「ザクセン」が誕生します。この小規模な公爵領は、ベルンハルト3世の死後、ザクセン公アルブレヒト1世によって拡大されました。しかし、彼の息子たちは領土を二つに分割します。1356年、カール4世の金印勅書によってザクセン公爵が選帝侯に任命されると、政治的地位は安定し、他の領邦とは異なり分割の危機を免れました。

1422年、ザクセン＝ヴィッテンベルクのアスカーニエン家が衰退し、ヴェッティン家意向で選帝侯位は受け継がれます。この時期、マイセン辺境伯領とテューリンゲン方伯領も加わることで、ザクセン選帝侯領が形成されました。1485年には、ライプツィヒ協定により、エルネスティン家とアルベルティン家に分割され、意義深い歴史的対立が生まれました。

宗教改革

16世紀に入ると、ザクセン選帝侯領はプロテスタント宗教改革の重要な拠点となります。フリードリヒ3世（賢公）はヴィッテンベルク大学を創設し、マルティン・ルターを教職に任命しました。ルターは1517年、95ヶ条の論題を掲げカトリック教会を批判、宗教改革を引き起こしました。特に、この時期の選帝侯のルターへの保護が、宗教運動の広がりを助けました。

その後、選帝侯ヨハンは、ルターの宗派を支えるために権威を振るい、1531年にシュマルカルデン同盟を結成します。しかし、1547年には皇帝カール5世に敗北し、選帝侯位を失います。これにより、エルネスティン系は支配権を失い、後にテューリンゲン小公国群へと小規模化します。

三十年戦争

ヨハン・ゲオルク1世の治世には三十年戦争が勃発し、最終的に選帝侯領は皇帝軍との和解を余儀なくされます。その結果、ザクセンはプロテスタント諸侯連合の指導的立場に立ちますが、内外の乱れた情勢の中で厳格な宗教体制が続きました。

18世紀とその後

1697年、フリードリヒ・アウグスト1世はポーランド・リトアニア王位に就くためにカトリックに改宗し、ザクセンでもカトリックとプロテスタントの対立が生じました。七年戦争やポーランド王位を巡る権力闘争も影響し、ザクセンの状況は複雑化しました。最終的には1806年に選帝侯位が廃止され、ザクセン王国が成立しました。

結論

ザクセン選帝侯領は、政治的な影響力と宗教的な発展を経て近代へと進展する中心的存在でした。その歴史は、選帝侯制度の変遷や宗教改革、さらには国家体制の変化を通じて、ヨーロッパの歴史において重要な役割を果たしてきました。

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