フィリピンオウム

フィリピンオウム（学名：Cacatua haematuropygia）は、オウム目オウム科に属する鳥類で、フィリピン固有種です。その美しい白い羽毛と、尾羽基部の赤い下尾筒が特徴的です。かつてはフィリピンの広範囲に分布していましたが、現在は生息数が激減しており、絶滅危惧種として保護されています。

分布

フィリピンオウムは、フィリピン諸島の一部にのみ生息しています。具体的には、シアルガオ島、タウィタウィ島、パラワン島、ミンダナオ島西部、マスバテ島、サン・ミゲル諸島などで確認されています。かつてはセブ島やネグロス島にも生息していましたが、現在は絶滅しています。

形態

フィリピンオウムは、全長30～31cmほどの比較的小型のオウムです。全身が白い羽毛で覆われており、翼の下面と尾羽は黄色、尾羽基部の下尾筒は鮮やかな赤色をしています。頭部には、後方へ湾曲した短い冠羽があります。雛は、クリーム色の綿羽で覆われています。また、オスの虹彩は暗褐色、メスの虹彩は赤褐色をしていることで区別できます。

生態

フィリピンオウムは、森林やマングローブ、林縁などに生息しています。ペア、または小規模な群れを形成して生活することが多く、果実や液果、種子などを主食としています。繁殖は卵生で、枯れ木の樹洞に巣を作ります。繁殖期は2月から6月頃で、巣の使用例は2月から4月、雛の発見例は5月から6月にかけて報告されています。飼育下では、一度に2～3個の卵を産むことが確認されています。抱卵期間は約28日で、雛は約9～10週間で巣立ちます。

人間との関係

フィリピンオウムは、森林伐採による生息地の破壊、ペット取引を目的とした乱獲、感染症の流行などにより、生息数が著しく減少しています。さらに、食用の狩猟や害鳥としての駆除、外来種による捕食も脅威となっています。また、生息数が少なくなったことで、台風などの自然災害による繁殖の失敗も懸念されています。かつてはフィリピン全域に広く分布していましたが、現在はごく限られた地域にしか生息していません。1981年にはワシントン条約附属書IIに掲載され、1992年にはより保護の必要性が高い附属書Iに掲載されました。最大の生息地とされるパラワン島での1991年の推定生息数は800～3,000羽、フィリピン全域では1992年に1,000～4,000羽と推定されています。

フィリピンオウムは、その美しい外見と貴重な生態から、多くの人々に愛されています。しかし、現状のままでは絶滅の危機に瀕しており、早急な保護対策が求められています。生息地の保全、違法な捕獲の取り締まり、繁殖プログラムの実施などが重要な課題です。私たちが、これらの課題に真剣に取り組むことで、フィリピンオウムが未来へと生き残る道が開かれるでしょう。

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